三十話:何よりも大切な―――
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出しておいて最後は放置するなんて、なんて身勝手な龍なんだ。
あいつらに実態があったらトマト料理をトマト中毒になるまで食べさせてやるというのに。
命拾いしたな、二匹とも。
「じゃあ、私はコカビエルを回収して帰るとするわ。そうそう、まだ名乗ってなかったわね。私の名前はヴァーリよ」
コカビエルを持ち上げて、思い出したようにそう言って、鎧の頭の部分だけを解除して顔を見せる白龍皇改め、ヴァーリ。端正な顔立ちにショートカットに整えたダークカラーの銀髪、いかにもクールビューティーっていった感じの女性だな。
イッセーがちょっと目の色を変えているがお前は相手が宿命の相手だという事を理解しているのか。それと横で拗ねているアーシアと部長に気づけ、いつか後ろから刺されても知らないぞ、俺は。
「それじゃあ、また会いましょう。未熟だけど面白い赤龍帝君。それとルドガー君はしっかりと覚えておくわ」
「は?」
なんで俺もその中に入っているんだ? というか、なんだかその言い方だとイッセーよりも重要視しているように聞こえるんだけど。そんな事を考えているとヴァーリが最後に投げキッスをして飛び去って行った……なぜか、俺に向けて。
そのことに訳が分からず、ポカンとしていると黒歌に頬を抓られた。どうやら俺が照れていると解釈したようだ。いや、別にそんな事を思ってもいないし俺は黒歌一筋だし……取りあえず痛いから離して欲しいです。
「はあ……取りあえず、話を聞きたいのだけど、いいかしら?」
俺はこちらを見て呆れたような顔をしてくる部長の言葉に頷く。
それと本当に痛いからそろそろ離してくれ黒歌。
「はあ…はあ……くそっ! あと少しでルドガー君を殺せたのによ…」
人通りの無い道をボロボロの体で歩く一人の男が居た。その男はつい先ほどヴァーリによって消されたと思われていた、リドウだ。彼は最後の力を振り絞って逃亡を図っていたのである。
その執念深さと生命力は流石だと言わざるをえないだろう。
「俺はまだ…死なない。もっと…生きてやる」
「残念だが、それは無理な話だ。リドウ・ゼク・ルギエヴィート」
「誰だ!?」
そんなリドウの後ろに突如現れ、声を掛ける男性。その男性の姿はまるで闇にまぎれるかのごとく全身黒づくめであった。リドウはその男の出すただならぬ気配に直ぐに戦闘態勢に入ろうとするがその場に崩れ落ちてしまった。何故か、その理由は簡単だ。謎の男に足を切り裂かれていたからだ。自分が気づく間もなく。
「グッ!? 誰なんだよ、お前はよお!?」
「答える必要はない。最も“偽物”の君には借りがあるがね」
「っ! そういうことか……お前は分史世界の―
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