三十話:何よりも大切な―――
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姉はこの人しかいないのだと実感する。
もっと話がしたいと、声が聞きたいと思い口を開こうとするが現実は残酷だった。
「邪魔が入ったか……まあいい、今度は二人纏めて跡形もなく消し飛ばしてやろう」
冷たい声で死刑宣告を下し、特大の光の槍を創り出すコカビエル。その大きさがコカビエルの本気さをうかがわせた。それを見た黒歌はすぐに白音だけでもと思って逃げるように言う。しかし、白音はずっと犯罪者になったと思っていた黒歌が自分の身を心配してくれていることに動揺と嬉しさを覚えてしまったのだ。
そんな姉を見捨てたくないと思ってその言葉を受け入れない。そのやり取りをコカビエルが待つわけもなく宣言通り二人纏めて殺すために特大の光の槍を凄まじいスピードで投げおろして来る。それを見て黒歌は間に合わないと判断してある行動に出た。
「白音……ごめんなさい」
「……っ!? 姉様!」
「こ、小猫ちゃん!?」
残された力を振り絞り黒歌は白音をイッセーの方に吹き飛ばす。少々痛いかも知れないが死ぬよりは何倍もいいと黒歌は自己完結する。そしてすぐ傍まで来ている光の槍を見ながらゆっくりと瞼を閉じる。
妹を守れたのだから姉としては悪くない死に方だと思うし、特に後悔の念もない。
ただ……一人の女性としては後悔の念が残る。こんなことになるなら恥ずかしがらずに
ちゃんと想いを伝えればよかったと後悔しながら黒歌は頭の中に愛しい男性の顔を思い浮かべる。
「―――ルドガー」
次の瞬間、光の閃光が迸り黒歌の居る場所を中心に巨大な爆発が巻き起こった。
その余りの威力と黒歌がそれをくらったという事実に一同の目が爆発の中心地に釘づけになるが
一人だけ別の場所を見ている人物がいた。それは攻撃を放った張本人コカビエルだ。
コカビエルはただ、ジッとすぐ傍の校舎の上を見ており。その表情は恍惚としたもので今から始まる戦いが楽しみでしょうがないといったふうであった。
そして、校舎の上にいる“二人”を見ながらゆっくりと口を開く。
「よく、あの状態からその女を救ってみせたものだな―――ルドガー・ウィル・クルスニク」
「「「「ルドガー!!」」」」
校舎の上に居た人物は黒歌を優しく抱きかかえ、まるで抜き放たれた刃のような鋭い目つきでコカビエルを睨みつけている。その人物の名前は黒歌が想いを寄せている男性
―――ルドガー・ウィル・クルスニクだ。
よかった……間に合って本当によかった。俺に抱きかかえられる黒歌の温かさにホッとする。後少し遅かったら俺はまた大切な人を失うところだった。まさかいるとは思わなかったとかの言い訳なんてしない。俺には失うか守りきるかの二つしかない。過程に意味は無い。
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