三十話:何よりも大切な―――
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――はぐれ悪魔――
それは眷属である悪魔が己の欲望の為に主を殺し、逃げ出した場合に付けられる名前である。
塔城小猫―――白音の姉である黒歌もまたそのはぐれ悪魔の一人だった。
はぐれ悪魔はほとんど場合、自分の欲望の為に主を殺して逃げ出したがゆえになるものだが例外は存在する。
その例外の一つが主に問題がある場合だ。黒歌は数少ないその例外にあたるものだ。黒歌の場合は元の主が妹の白音の仙術の才能に目をつけて無理やり白音に危険な仙術を使わせて眷属にしてしまおうとしたのでそれを止めるために仕方なく主を殺したためにはぐれ悪魔となったのだ。
だが、そんな理由が何の力を持たない一悪魔の為に考慮されるわけも、調べられるわけもなく、黒歌は一方的に罪人扱いされ、逃亡するはめになり。妹の白音もその罪を償わされる形で処刑まで後一歩の所まで追い詰められた。もし、あの時、魔王であるサーゼクス・ルシファーが白音を拾ってリアスの眷属にしていなければ姉妹にとって最悪の結末が待っていただろう。
自分が感情に流された行動をとってしまった為に結局妹を傷つけてしまった事を黒歌はずっと後悔していた。だから、これは当然の報いなのだと妹を庇った際に負った傷を見て思う。
黒歌は最上級悪魔と同等の強さを持つほど強い。しかし、物事には必ず相性というものが存在する。
黒歌は接近戦も問題なくこなすが特別生身での防御力が高いというわけではない、それに加えて堕天使が使う光は強くなっていけば軽減されるが悪魔にとっての弱点であることには変わらない。それを真正面から受け止めたのだ。一応仙術を使い簡単な防御はしたがダメージを負ったことには変わりがない。致命傷ではないがしばらくは動けそうにない。最初から守りに出ていればこうなることは、まず、なかったと思うが自分は拒絶されるのが怖くて隠れて見ている事しか出来なかった。
これ以上はダメだと思って体が勝手に動いた結果、中途半端になってしまったのだ。結局は自業自得なのだと、自分が今まで犯してきた過ちが今になって自分に返って来たのだと黒歌は皮肉気に笑う。その笑いを見て何かを感じ取った妹が恐る恐るといった様子で近づいて来る。
「……どうして、姉様は……庇ってくれたのですか?」
訳が分からないと言わんばかりの妹の顔に今更ながら自分がしてきたことが妹をこれほどまでに苦しめていたのだと実感する。もし、自分が第三者ならこんな最低の姉を持ってしまった妹に同情したくなる気分だ。でも、自分はこんな最低な姉だけど他の誰でもない白音の姉なのだと思い、口を開く。
「私が白音の……お姉ちゃんだから」
「……姉様…っ!」
その言葉に白音は思わず、涙が出そうになる。未だに疑惑や不安は拭えないがそれでも自分の家族は―――
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