番外17話『デリカシー』
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「――え」
頬にに痛みが走った。
あまりに突然のことに、自分がナミに叩かれたのだとハントが気付くまでに数秒の間がかかった。痛みが走った頬を気にすることすら出来ず、ハントは状況を理解できずに首を傾げてどこかブリキ人形のようにぎこちない動きでナミを見つめる。
「……」
「……」
なぜいきなり殴られたのか。
ただその意味が分からずに声を発しようとした時、既にナミが口を開いていた。
「そんなことって…………何よ」
ハントを殴った右手とは逆の左手、その拳、肩、声、瞳。それら一切が震えて滲んでいた。
「……え、いや……え?」
ナミの様子がおかしいことに、ここでやっとハントも気づいた。
ただ、やはり思考回路はついて行かない。
なんで殴られた、とか。
なんで今のナミはこんなにも辛そうなんだ、とか。
そんなこと……どんなことだ、とか。
わけもわからずにそんな様々な疑問がハントの脳裏をかすめいく。
けれどハントなりに何かを答えなければならないと感じたらしく、口をパクパクと、まるで金魚のように動かす。ただ、結局出てきたものはただのかすれた空気で、それは言葉として成立していない。
ただナミの手を掴もうとしたハントの腕を、ナミは拒絶して、言う。
「私はあっちですごくムカついて――」
睨み付けて、言う。
「ハントはロビンと楽しんできて――」
悲しそうに、言う。
「……私、バカみたい」
――ほんと、私ってバカ。
最後に漏れた声が、より重い響きを持ってハントの胸にのしかかる。
――だめだ、行かせてはいけない。
それを咄嗟に思ったハントだったが、この状況を理解できていない頭と体がいうことを聞かず、ただ腕を伸ばすだけに留まる。船室へと駆けこんでいくナミの背を、ただハントは見つめるしかできなかった。
「……ぇ……ぇ?」
訳がわからない。
それ。
ただそれだけがハントの脳内の全てを占めていた。
助けを乞うように首をめぐらせて、そこでフとロビンが呟いた。
「だから大丈夫か漁師さんに一度聞いたのだけど」
「いや、ロビンちゃんは悪くない。どう考えても悪いのはこいつだからさ」
「え? ……俺?」
サンジのことだから、また絶対的に男が悪いみたいな言い方を……そう思ってどこかホッとした様子でサンジを見るハントだったが、サンジの目がそういう時のものではなく、ただただ真剣な目をしていることに気付き、サンジ特有の女性第一の考えとかではなく、サンジの一人の人間としての意見だということに気付いた。
「俺……なんか悪いことしたのか?」
本気でわかっていないハントへと、サンジは「ったく」とため息を落として睨み
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