第六話「レストラン・パニック」
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パスするためパスの回数を数えるのは難しく、何とか数え終わったのち、こう聞かれる。「あなたはこの動画の最中に、2つのチームの間にゴリラが横切ったのに気づきましたか?」と。そうして見る側の多くはこう言うのだ。──気づかなかった、と。
これからも分かるように、人は1つの作業、または対象に注意を向けていると予期せぬ事態に気づく可能性は低くなるものなのだ。これは先ほどの実験からも示される、事実である。
現在、強盗も人質も傍観者も、その場のほとんどの注意が上条へと向けられていた。らこれは先ほどの実験でいう、「白いチームに注意を向ける」のと同じ状態であった。
──だからだろうか。強盗たちは自分たちの後ろに現れた少女が、人質を彼らの手の内から空間移動させたのに気づくには、ワンテンポ間があった。
「なっ……!お前!」
最初にそれに気づいたのは小さな少女を抱えていた茶髪の男だった。後ろにいきなり立っていた少女を見て、驚き後ずさる。しかしそれは少女がいきなり現れたことに対する驚きだけではなかった。
「──類人猿にしては中々頭を使った作戦でしたわね。まあ及第点くらいは付けますわよ」
そう言いながら白井黒子は、自分に拳銃を向けようとした痩せ型の男が振り向く前に空間移動で絶妙の位置に移動し、男の後頭部に飛び蹴りを食らわせた。
「かはっ……!?」
いくら非力な女子中学生とは言え、日々風紀委員として心身ともに鍛えている黒子の蹴りは、とてもでは無いが運動が得意とは言えない男の意識を奪うには十分すぎるものだった。
「くっ、くそっ!」
逃げ出すスキンヘッドの男。傍観者から新しい人質を調達しようと考えた末の行動だったが、その目論見は打ち砕かれる。
「させねぇ……よ!」
前に立ち塞がったのは浜面だった。何の武器も持たない、しかも何の能力も発動させてない──恐らくは無能力者の少年に負けるわけがない。と強能力者の男は判断し、己の能力を発動しようとする。
しかし立ち塞がったのは只の無能力者ではない。何の能力も持たず、実際に超能力者を下した唯一の無能力者なのである。何より能力にかまけ何の努力もしなかった末に能力開発の壁に阻まれ自暴自棄になったこの男と、一時は自暴自棄になりながらもそれでも立ち上がり、日々何かを守るために己の特技(その多くはピッチングや偽造パスポートといった人に誇れないようなことが多いが)を磨き、スポーツ選手のようなトレーニングを積んでいた浜面とでは、能力の有る無しを含めても、立っている場所が違った。
向かってくる男をこの前手に入れた伸縮式の警棒を使って能力発動前に無理やりねじ伏せる。
もがく男だったが、身体能力の差が違うため、その足掻きは全くの無駄
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