第六話「レストラン・パニック」
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いた上条は辺りを見回し、よしのんを見つけ出した。そしてこの少女の状態が、あのパペットが離れたことによるものだと、理解した。
「…………よし、分かった。俺が取ってくる」
「なっ……!?」
しかし続く上条の言葉は、士道にとっても琴里にとっても、もちろん令音にとっても予想外のものだった。
目の前のこの少年は今なんと言った?「なんとかしてよしのんを取り戻さなくては」という気持ちでは誰にも負けないつもりの士道すら躊躇った行為を、平気で「やる」と言い出したのだ。
「……まさか本気とか言い出さないでしょうね」
疑い深く、否、本気だとはとても信じずに発せられた琴里の言葉は、上条がはっきりと「本気だ」と口にすることによって返された。間違いなくこの少年はよしのんを取りに行くつもりだ。
「ちょっ……!正気!?」
「なーに。気づかれなければいいんでせうよ……」
「ん……とうま?どこ行くの?」
「おまっ……おい!どこに行く!」
そう言いながら匍匐前進で前へ進む上条。慌てて引き止めようとする琴里やインデックス、オティヌスだったが、時はすでに遅かった。
士道がよしのんを取りに行けなかった最大の理由は、「人質がいる」である。もしも人質がいなければ士道も上条と同じ行動を取っていただろう。しかしそれは仮定の話だ。人質がいる以上、うかつに手出しができなかったのが士道だった。
(こいつ……何考えてん──)
「何やってんだテメェ!」
当然、ピリピリとして周囲に最大限の注意を向けていた強盗に見つからずに済むわけもなく。匍匐前進で進んでいた上条を見つけた痩せ型の男は威嚇射撃として上条に向かって発砲する。どこからか、悲鳴が上がる。
幸いにして上条に弾は当たることなかったが上条はこれ以上進めなくなる。
「…………」
「何やってんだって聞いてんだよ!立って、腕組んでこっち来やがれ!」
男が叫び声を上げる。上条は何も言わずに立ち上がると、手を後ろに組む。
琴里は心の中で舌打ちする。よしのんを取りに行こうとした見ず知らずの少年は新たな人質になるし、先ほどの銃声は敏感な四糸乃の精神状態を更に不安定にさせた。このままでは四糸乃が暴走のは目に見えている。
事態は最悪だ──それが士道や琴里が抱いた共通の思いだった。
皆さんは「見えないゴリラ」というものをご存知だろうか。これはとある心理学者が行った実験に付けられたタイトルである。初めに、見る側には「白いユニフォームを着たチームがバスケットボールを何回パスしてますか?」という指示が出される。すると白いユニフォームと黒いユニフォームを着たそれぞれ3人のチームが、エレベーターホールらしきスペースで何回もパスをしあう動画が流される。それぞれのチームが入り乱れながら
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