四十四話:俺に従え
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れは彼女が実際にした経験であり、実際に感じた感情。
「今から言うのは独り言だから…」
「…………………」
「みんな…みんな私を不気味がるの……生まれた時からそう。ずっとのけ者にされた…私なんかいらないって……でも…それでも良かったの。どうせ誰からも必要とされないから…一人になりたかった」
ポツリポツリと話し始める彼女の重い言葉にギャスパーは静かに聞き耳を立てて聞き入る。
何故ならそれは今自分が抱いている感情と同じような物だったからだ。彼女のことは良く知らないがギャスパーは今、どこかしらの親近感を彼女に感じ始めた。
「私は良く分からない力を持っている。そのせいでやっぱり気味悪がられる…ただ私は普通に居たいだけなのにどうして私にばかり変な力があるの…? ……こんな力私は欲しくなかった、他の人だってそう、こんな力を持つ私なんて望んでない、それなのに…どうしてこんな力が私にあるの?」
ギャスパーはそこで理解した。彼女もまた自分と同じように望まないままに力を持たされたが故に自分と同じような境遇にあった人間なのだと。そしてそこまで理解してある疑問が芽生える。彼女はどうして自分と同じような目にあっていながら自分のようにはなっていないのかと。自分のように人に恐怖していないのかと。
「どうせ私を必要としてくれる人なんていないんだから、ずっと一人で居たいと思っていた……でも、お兄ちゃんがそれを変えてくれた」
そう言って本当に嬉しそうに笑うクローム。その様子を段ボール箱の小さな隙間から覗いていたギャスパーは心底羨ましいと思った。自分もあんな笑顔を見せれる人になれたらどれだけ素晴らしいかと思わず想像してしまった。そのことを知ってか知らずかクロームはさらに言葉をつづける。
「お兄ちゃんが私を必要だと言ってくれた…私に手を差し伸べてくれた。家族になってくれた。あなたにも手を差し伸べてくれる人はいるでしょ?」
「………………」
ギャスパーは無言で自分の周りに居る人たちを頭に思い浮かべる。自分の命を救ってくれたリアスにその眷属達は確かに自分を受け入れてくれるだろう。でも……もし、拒絶されたら? そこまで考えるとまた恐怖で動けなくなる。そんなところにまた声が聞こえてくる。
「怖いと思うけど…大丈夫。あの人達ならあなたを受け入れてくれる。
だから―――勇気を出してその手を握り返してみて」
「僕は………」
「頑張ってね…応援しているよ」
最後にそれだけ言い残して去っていくクローム。ギャスパーはそんな彼女が完全に去って行った事を確認した後でゆっくりと段ボール箱の中から出る。そして自分の手の平をゆっくりと眺めて見る。この手の平を本当に握り返してくれるのか、自分に差し
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