暁 〜小説投稿サイト〜
私立アインクラッド学園
第二部 文化祭
第59話
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の恋人を連れて手の届かない所へ行ってしまいましたって言っておくわ」

「いやいや、駆け落ちする訳じゃないんですから……」

 俺が苦々しい愛想笑いをすると、先生は少し不満そうに眉を落とし、しっしっと手を払った。

「それじゃ、行こうか。アスナ」

「い、行くって、どこに? 今から空港に向かったんじゃ、きっと間に合わな……」

「俺がなんで、さっき先生に生徒手帳について質問したと思ってる?」

「ええ……? え、ええと…………あっ」

 理解してくれたらしいアスナにウインクして、彼女の手をぐっと引き、廊下へと俺達は駆け出す。
 生徒指導の鬼教師が「廊下を走るな」と怒鳴っているが、口うるさい教師なんて俺の眼中になかった。秩序を重んじるアスナですらも、然して気にも留めていないご様子だ。
 走って、走って、屋上にたどり着いた頃、アスナが口を開いた。

「キリト君、この辺でいいんじゃないかな?」

「ああ、そうだな。アスナ、生徒手帳ある?」

「いついかなるときも所持すべきものです。キリト君じゃないんだから、わたしは常備してるわよ」

「あー、はいはい。後は"使う"だけだな」

「ふふ、そうだね」

 手を口元にあててクスクス笑うアスナを微笑ましく思い、俺の顔は一時緩んだ。それを引き締めて、彼女に言う。

「それじゃあ行くか」

「ねえ、同時に言ってみない?」

「お、おう……じゃあ俺がせーのって言うから」

「了解です、キリト君先輩」

 アスナは悪戯っぽい表情で敬礼した。

「……せーの!」
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