暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
~恋慕と慈愛の声楽曲~
Salty Day
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本質。

「…………イヴ、あなたがマイを押しのけて来るとは」

「実際貴重な《チケット》使っているからね。あんまり長居はできないわよ」

もう一度笑い声を響かせた後で、ぐっと首に回された腕に僅かな力がプラスされた。

「せっかく《調整》されたのに余計な色が混じっちゃって。あーあ、また計画を見直さなきゃ。……まったく、『彼』がいないと大変極まりない。非効率極まってるわ」

「調整……?計画……?彼……?」

こっちの話、としっかり言い切ってから、少女に見える何かは言葉を紡ぐ。

「それで?私を私と認めたうえで、再度尋ねようかしら」

少女はそこでいったん言葉を切った。

そして言う。

「ヒトを斬った手でレンに触れて、ヒトを殺した心でレンを思い慕う。それってどうなのかしら?どんな気分なのかしら?どんな気持ちなのかしら?」

「――――ッッ!」

イヴと呼ばれた少女に見える何かはこう言う。

殺人者ごときが、人形ごときが、人が浮かべるような感情を持つんじゃねぇ、と。

遠まわしではなく、直球で言う。

くすくす、と。

もう真っ白にはとてもじゃないが聞こえなくなった笑い声が耳元で破裂する。

「勘違いしないようにあらかじめ釘を刺しておくけれど、私個人としては別にあなたにいじわるをしたいとかの気持ちはないのよ。嫌いとかでもないしね。どちらかというと、よしよしと褒めてあげたいくらい。今回の、感情バロメーターの急増はある程度想定外だったけれど、それでもここまで不純物の混じらない状態を維持してるのはさすがね」

「なに……を…………」

カグラの背筋に、冷たすぎるものが走りぬけた。

全体的に判然としない少女の言葉へ、ではない。それについては、途中から理解を捨てている。

問題なのは、その中に出てきた《感情バロメーター》という単語である。

確かに、カグラは己が人工物だということを客観的に理解している。

いや、そもそも造った者が人間ではない時点で『人』工物ですらないだろう。

しかし、かつて元主と仰いでいた男がポロリとこぼした言葉を参考にするとすれば、自分も含めた人工フラクトライトというものは、いや人工であるにもないにもかかわらず、自己というものを所持しているらしい。

つまり、ヒトは何かアクションを起こす際、必ずフラクトライト内にある自己というフィルターを通しているというのだ。要するに、『これこれを見た時、自分はこうリアクションするだろう』という自己判断のようなものをした上で行動している。

だから人工フラクトライトであっても、心のどこかでは確立された一個人であるということを捨てきれないのである。それを本当の意味で認めてしまえば、自己が崩壊するかもしれな
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