暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
~恋慕と慈愛の声楽曲~
Salty Day
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「……ホントにどんな胃袋してるの?僕はちょっと心配になってきたよ」

「だから先に行って何か作ってて」

しかもスルーですかい、とブツブツ言いながら、しかし手持ち無沙汰だった感も否定できなかった少年は重いため息を吐き出して、ひらりと手を振った。

「それじゃ先に行って、ありあわせで適当に作ってるよ」

「材料は足りますか?」

脳裏に、プレイヤーホームに保管している多量の食材アイテムを思い浮かべながら、カグラは問う。いや、足りることは分かりすぎるくらいに分かっているのだが、ただの確認事項である。

それを分かっているのか、紅衣の少年のほうもとくに考えた様子もなく即答する。

「んー、たぶん大丈夫でしょ。まぁ最悪、別に水だけでもいいしねぇ」

「レン!その扱いに講義を申し立てるかも!!」

あっはっはー、と適当な笑い声とともに、空気が一瞬揺れた。

数瞬前まで少年がいた空間には紅色の残像を残すのみで、小柄な姿は跡形もなくなっていた。

一昔前までは、ここまでの急加速飛行をすれば絶対に空気を切り裂く鋭い轟音が鳴り響いていたのだが、最近ではそれすらもなくなっている。本人によれば《地走(じばし)り》の応用らしいのだが、もう理屈やロジックがあるのかすら怪しくなってくる。

後ろ姿ももう欠片も見えないし。

「相変わらず速いね〜」

きゃいきゃいと背中で騒ぐ少女にそうですね、と返しながら、うっかり落っことしたりしないようにもう一度よいしょと直して、カグラは少しでもレンに合わせるように早めていた飛行速度をゆるやかに設定しなおした。

現実とは日照時間がズレているALOにおいて、キリト家にお邪魔したときにはかなり高く昇っていた陽光の塊も、稜線の向こう側に宵闇の青紫を撒き散らしながら沈もうとしている。

遥か彼方では、プレイヤーに狩られるか虐めるかのどっちかに疲れた数匹の飛行型異形モンスターがゆっくりとコウモリみたいな翼を上下させていた。

背後だからまったく分からないが、どうやらその光景をゆっくり首を巡らせて眺めていたらしきマイは、しばらくの間沈黙を貫いていたが口を開いた。

ふわりと出たのは、どこか面映そうな言葉。

「…………で?」

「で、とは?」

くすくす、と。

背負われた真っ白な少女は、真っ白な長髪をなびかせながら、真っ白な微笑をこぼす。

「バレンタインっていう言葉をどこで仕入れたかは知らないけれど、あなたが贈り物とはね。()()()()()浮上してみれば、なかなか面白いことになっているわ」

それは、誰も知らないマイ。

いや、レンは一時見たことがあるか。そして、カグラはもちろん認識している。

マイの中に住まう《魔女》
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