第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月一日:『“妹達”』
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それは、七月最後の日。稲光が引き裂いた漆黒の空から降り注ぐ雨粒が叩き付けられる闇夜の底で、一人雷鳴を聞きながら。路地裏の物陰に隠れたままで、びしょ濡れになりながら『その時』を待つ。
時ならぬ雷雨に、視界は最悪だが問題はない。軍用ゴーグルを操作し、熱源探知に切り替えて。覗きこんだ曲がり角の先に、悠然と歩いてくる人の形の熱源が一つ。
「あァ────面倒くせェ。何も、こんな日にまでヤる事ァねェだろうによォ」
ゆっくりと、この豪雨の中を傘も差さずに歩く少年のらしき熱紋。それを確認して、常盤台の制服を纏う少女は握り締めている細身のライターのような形状の、スイッチのカバーを外す。
「オイオイ、何処に居やがんだァ? 今回はやけに消極的じゃねェか」
「……………………」
あと五歩、まだ早い。この距離では駄目だ。アレが踏み込むまで。
「ンだよ、かくれンぼかァ? 怠ィなァ、さっさと終ェにしようや」
「……………………」
あと四歩、まだまだ。この距離では、前と同じ結末だ。
「チッ……無視かよ。あ〜あ、段々腹立ってきたわ……」
「……………………」
あと三歩、もう少し。遅過ぎても早過ぎても、通用しない。ジャストでなければ、死ぬのはこちら。
「よォ、どんな死に方が好みだァ? 挽き肉か、細切れかァ? 好きな方を選びやがれ」
「……………………」
あと二歩、あの『能力』の効果範囲に─────
「返事なしかよ……ンじゃ、勝手に選ばせて貰うぜェ?」
「……………………」
あと一歩、踏み込めば入る────!
「────────!」
押し込まれたスイッチにより、少年の歩く路地に設置されていた爆弾────高指向性対人地雷、所謂『M18 クレイモア』を学園都市の技術で更に強化した『M18R 鋼の雨』が、これ以上ないタイミングで起爆した。
少年の直ぐ脇で、高指向性爆薬が爆ぜて内部の散弾を撃ち放つ。そもそも、それだけでも人どころか装甲車や戦車の無限軌道くらいなら吹き飛ばせる。
だと言うのに────撒き散らされた子弾が更に炸裂して、電子制御により『少年』に向けてのみ、全方位から文字通りの『鋼の雨』を撒き散らす。完全な過剰殺傷だ。
故に、『対人地雷』としては失敗作。間違いなく、殺してしまうから。無論、それが足下で炸裂した『少年』はもう、肉片しか残っていない筈であり────
「────っ?!」
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