第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月一日:『“妹達”』
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る市媛を、黒子と共に庇い立つ。
「……朝っぱらから百分の一かよ」
「右に同じく……はぁ、朝からついてませんの」
嚆矢は『硬化』のルーンを刻んだ革手袋を嵌めつつ、黒子は金属矢を指に持ちつつ、実に面倒げに。
「本当、この都市って退屈しねぇな……」
心底から呆れ果てた風に吐き捨てながら、まだ装着していなかった『風紀委員』の腕章を取り出したのだった。
………………
…………
……
それは、遡って数分前の事。
「……………………」
頬杖を突いてモノレールの窓の外を詰まらなそうに眺めていた、ハンチング帽に大きなヘッドホンを首に掛け、火の着いていない煙草を銜えた少女は、その青菫石の瞳を一回だけ瞬かせる。
一番端の席で隣の席にキャリーケースとビニール傘を置いて全てに関心を払っていない、薄手のジャケットにホットパンツ、ニーソックスとブーツの娘は。
「ちょっとちょっと聞いてんの〜、お嬢ちゃん?」
「何だよ、無視することないじゃん?」
「俺らはさ、親切心から言ってんだよ〜?」
「俺ら、学園都市に詳しいから案内してあげるってさぁ」
「そ〜そ〜、お兄さん達が手取り足取り腰取りな」
「なんなら、大人の階段まで案内しちゃうぜ〜?」
「……………………」
そんな少女の真横、通路側に下卑た笑い顔の男達が立っている。一つ前の駅で乗り込んできた、落第生だ。その六人が、実に友好的な笑顔と言葉を向けながら。
周囲の乗客は、見て見ぬ振りだ。それが一番、無難であるから。それもあろう、しかし一番の理由は。
「“────煩い、黙れ”」
「なっ────!?」
「テメッ────!?」
無関心な様子のままの少女の発した、その台詞。それに、六人は逆上したように顔を真っ赤にして────喉を押さえて、錯乱したように。或いは、酸欠の金魚のように口をパクパクさせて。
他の乗客と同じように、黙らされて。
「“次の駅で降りて、その足であの男の周りの女をしつこくナンパしなさい”」
「「「「「「…………………」」」」」」
初めて、表情に『怒り』じみたものを浮かべた彼女に与えられた言葉に、男達の目が虚ろに濁って。そのまま、ふらふらと出入口付近に立つと、タイミング良くモノレールが止まる。男達は、そこで降りていった。
それに、興味を向ける事もなく。|青菫石
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