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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月一日:『“妹達”』
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 覗き込んでいたゴーグルが、撥ね飛ばされた。茶色のショートボブの髪が、幾らか散る。それを為したのは、間違いなく──────
 負傷した片目を押さえる右手。零れ出す赤い滴、止め処なく。


「────細切れの後にィ、挽き肉だな。イィッツ、ショオォウ、タァァイム」
「あ────…………」


 その『濡れてすらいない右手』の持ち主である『白髪の少年』が稲光に照らされながら、悪鬼の如き笑顔のままに耳許に語り掛けた言葉を最後に─────雷鳴の轟く路地裏に、今度は血の雨が降って。


「…………第8376次実験“全方位同時飽和攻撃に対する反応テスト”の終了を確認。目撃者、なし。『廃品処理』の後、帰投します」


 それを、びしょ濡れのまま『見ていた』もう一人の常盤台の制服を纏う少女。彼女は、無惨な挽き肉と化した『少女だったもの』を見下ろしながら。


『お疲れ様、撤収後三時間で次の実験だよ。いつも通り指揮は任せるね、“中継装置(トランスポンダー)”?』
「了解しました、“教授”。“10000号(トランスポンダー)”より伝達、8377号は次の実験の準備を。8378号から8400号には撤収作業を開始を指示します」


 それを確認したもう一人の『彼女』は、ゴーグルに内蔵された通信機器に向けて呟いた。耳に届く掠れ気味の老人の声は、実に楽しげに。実に不快な余韻を残して、消えた。
 その声に答えて────周囲の物陰に、ゴーグルの光が無数に浮かんで。稲光が照らした『彼女』…………軍用ゴーグルを外し、雨雲に覆われた夜空を見上げる『御坂美琴』の姿。


「……………………何故」


 通信装置を切ってのその呟きは、雷鳴に掻き消されて誰にも届く事なく…………。


………………
…………
……


 現在時刻八月一日朝八時、風紀委員(ジャッジメント)第一七七支部への通勤途中。昨夜の雨に濡れた道は、しかしもう、夏場の猛烈な暑に乾きかけている。
 足下から這い上がってくる水蒸気に、少しは涼しいような。蒸す所為で不快な気分を味わいながら、嚆矢は歩く。


 その道々、通行人からクスクスと笑われる。子供からなど、指を指されてしまう始末。通常の学ラン姿、別に寝癖が付いている訳でもない。では、何故か? 当然、背中の少女の為だ。


「うむ、この『はんばーがー』とか言うものは実に合理的じゃな。紙で摘まんで食えるところが良い、合戦の最中には籠手が外せぬからのう」
「さいですか……つーか、俺の分まで食うなよ!」
「良いではないか、良いではないか。呵呵呵呵呵呵(かっかっかっかっかっか)!」


 『面倒じゃ』と歩く事を拒否して嚆矢に背負われたまま、つい先程コンビニで買った朝飯のハンバーガーを
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