暁 〜小説投稿サイト〜
運命の向こう側
1話
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 年季が入っているものの、しっかりした作りの大きな家。それを見て、ほう、とバゼットが吐息を漏らした。

「なかなか立派ですね」
「そう言えば、まだ鍵を渡していませんでしたね。これがそうです」

 ちなみに、セイバーも士郎も、バゼットが今までどこに泊まっていたか知らない。気にはなったが、怖くて聞けなかった。
 最近まで使われていた家は、埃が積もっているという事は無い。しかし、掃除業者を入れる訳にもいかないので、それなりに汚れは溜まっていた。本当は、バゼットが来る前に先に掃除したかったのだが。荷物を置き、身嗜みを整えてすぐ出てしまったので、全て手つかずだ。
 よし、と気合いを入れて、上着を脱ぎ腕をまくる。セイバーはエプロンと頭巾を用意している所だ。

「バゼット、これから掃除するから、ちょっとだけ待っててくれ」
「必要ありません。寝泊まりに問題はありませんから」
「ダメです。却下です。必要あります。だから居間で、お茶でも飲んでてくれ」
「……それでしたら、私が掃除をしましょう」
「ダメです。却下です。必要ありません。頼むからおとなしくしててください。一番最初に終わらせるから」

 とぼとぼと去る背中に、罪悪感を感じないわけではない。しかし、彼女にやらせればそれは掃除ではなく、破壊活動だ。引越し一日目にして住居を失わないためにも、絶対に参加させられない。
 買っておいた掃除用具を持つと、士郎は二階に上がった。部屋割りは最初から決めており、迷うことは無い。開けた部屋はそれなりの広さで、家具も残してあった。ありがたいが、後発で届く荷物が来るまで、利用されることはないだろう。
 慣れた手つきで箒を掃き、ぞうきんをかけていく。一部屋終えてバゼットを呼び、次の部屋に取りかかった。
 日が暮れる前には一階まで全て終えて、残すは地下のみ。バゼットも呼び、三人で階段を下りていく。
 掃除をするとすれば、それは士郎とセイバーの二人なのだろう。だが、施設が施設である以上、意見を聞かずにやる訳にもいかなかった。

「どうだった?」
「ええ、私はこの部屋にします。掃除も結構です。扉のコードはすでに変更済みなので、絶対に近づかないように」
「分かった」

 もしやすれば、地上部分よりも大きな地下室。大きな部屋が二つに、小さな部屋が一つ。それらは、魔術師の工房だった。こればかりは、人が手を入れた場所を使おうとは思えない。

「しかし、良いのですか? 私が一番最初に、工房の場所を決めてしまって。立場で言えば、工房の敷地事態無くても仕方がないのですが」
「ああ。全然構わないぞ」
「ならば、好意に甘えます。ですが、そちらの研究に影響がないようにして下さい」
「あー……うん、まあ、それは大丈夫だから。気にしないでくれ……本当に」


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