プロローグ
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ギルギス以外の全員が倒されていた。眉間から激しく鮮血を吹き出し、無様に転がりながら……。そしてその冷酷な銃口は、ギルギスへと向けられていた。
「……見事な腕だな。まさかあんたみたいなのがいるとは」
呆れと感嘆が合わさったような声を、ギルギスは途切れ途切れに話した。
「…誉め言葉と受け取っておくわ。こいつを拘束して」
少女はそういいながら向けていた銃をおろし、仲間とおぼしき男たちに指示した。そして人質に歩み寄ると、落ち着いた様子でロシア語で話しかけた。
「フェンリルPMC救出部隊です。助けに来ました。もう大丈夫です」
そう話す声からは、先ほどまでの冷酷さを感じさせない、落ち着いた様子がとれた。
「ありがとう。…もうだめかと思ったよ」
口からガムテープがとれた男は、久々に、開いた口から安堵の息を漏らした。
「ご安心を。我々は誰も見捨てません」
そう受け答えする少女の姿は、実に凛々しく、可憐だった。ギルギスは、輸送車に乗せられる間際、その少女に話しかけた。
「あんた。名前は?」
「……私の名前はアリス。アリス・フィリア・レヴィオンよ」
銀色の髪をたくしあげながら、少女は言った。
「アリスか……覚えておくよ」
男の目から涙がこぼれた。
少女はそれを横目に、何かを思い出したかのような表情を浮かべた。だがすぐに元の表情に戻し、
「出して」
そう言うと、輸送車のドアをたたいた。その後ギルギスは、ウクライナ政府に身柄を引き渡され刑務所に収監、その後釈放されたが…
アリスという少女を目にすることは、二度となかったと言う。
世界がどう変わろうとも、そこには必ず悪しき者と正しき者が生まれてくる。正しき者が生まれれば生まれるほど、悪しきものも同じように生まれてくる。負の連鎖は絶えることなく、いつの世にも訪れる。私は、アリス・フィリア・レヴィオンは、その連鎖を裁ちきるために、明日も戦い続ける。そこがどこで、相手が誰であろうとも。
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