プロローグ
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世界がどう変わろうとも、そこには必ず悪しきものと正しきものが生まれてくる。だが、どちらが悪でどちらが正義かなんて、それは、その物事を見る側によって変わってくる。世の中は、単純で曖昧だ。私が正しい事だと信じて行っている行為も、…見方を変えれば悪になり得るのだ。かつて、私の両親の命を奪った者と、その者の命を奪って、私の命を救った者がいた。そして私は、後者の者の側に付いた。その決断を、いずれ後悔する日が来るかもしれない。私を恨み、命を狙って来る者が居るかもしれない……。だけど、今はこれでいいと思っている。この仕事を通じて、私は生まれて初めて、生き甲斐というものを感じたからだ。今日も1人の人間の命が危険にさらされている。私は私のやり方で、人の命を助けることを選んだ。ならば貫かなくてはなるまい。自らの信念というものを。
2020年 3月10日 ウクライナ ロシア国境付近上空 日本時間午前1時12分
窓の外には、プロペラが激しく音をたてながら薄い雲を切り裂いていく様が写し出されていた。
「……」
そんな情景を横目に、右足に装着したホルスターに納めていたハンドガン、SIG P220のセーフティを外し、スライドを引きながら、固く結んでいた口を開いた。
「…通信チェック。フレンダ、聞こえる?」
「こちらフレンダ。感度良好。回線を独立化。盗聴の恐れ、ありません」
「了解。全部隊員につぐ。まもなく目的地上空に到着する。救出対象がいる別荘のデータは全員のディスプレイに転送済みだ」
淡々と伝えているその声にはこれからの任務を感じさせるような緊張感がある。
「30秒で別荘を包囲し突入。速やかに敵構成員を排除、人質を救出する。フレンダ、テロリストの人数と武装は?」
「敵構成員は13名。武装は旧式のカラシニコフ7丁、SVD(ドラグノフ)4丁、RPGが2丁、その他サブアームを各自装備しています。それから別荘周囲には、何ヵ所かに指向性対人地雷が設置されているもようです。地雷の設置位置を、さっき送ったマップデータにリンクさせておきます。」
即座に呼ばれた彼女は、まるで教科書を読んでいるかのように精密な答えを応答する。
「皆聞いたわね?大戦中の代物だからって油断しないでね。銃は銃なんだから。それから地雷の位置をしっかり確認しておくこと」
「了解です、大尉どの」
隊員の1人が、顔に笑みを浮かべながら言った。
「冗談はそのへんにしときなさい。もうつくわ」
その男を制する呆れ声が、すぐに周囲の雰囲気をがらりと変えた。
『目的地到着!全員降下しろ!』
パイロットから無線でそう告げられ、全員がワイヤーで降下し始める。最後に自分が降下し終えると、ヘリはワイヤーを回収し、うす暗い上空へと消えてい
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