第五話「士織ちゃんの受難」
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腕時計を見て時間を確認してみると、確かにイベント開始まで残り10分を切っていた。彼女がキャストチーフである以上、これ以上ここにいるわけにはいかないだろう。
「すまない。これ以上は……」
「あの、最後に一ついいですかー?」
「む、何かい?」
パイプ椅子から立ち上がった女性を机のちょうど正面に座っている美九が呼び止める。最後に一つだけ、質問があるようだ。
「イベントにおける特別枠ってなんですかー?」
「ああ、それか」
そういえば女性が士道を攫った理由に「イベントの特別枠が──」という話があった。美九は恐らくそこが気になったのだろう。
「このイベント、パークを訪れたお客さんの中から一人、特別な衣装で参加してもらうというものがあるんだ。ところが今回はことごとく断られてなぁ……いくら困っているといえどこいつのような行動に出るやつはこいつ以外いないが」
それで困って女性はあの様な行動に出たらしい。いや、それでもあんな行動を取るとは予想できないだろうが。
「そういうことだ。この話は──」
「──あの」
ここで士道が言葉を挟む。一同の目が、士道に集まる。
「──よかったら参加しましょうか?」
「え!ホントもがふが」
「……いいのかい?」
士道の言葉に反応した女性の口に手を被せながら、目を向けるキャストチーフの女性。士道はそれにうなづくと、他の皆にも同意を求める。
「別にいいよな?」
「うむ!シドーがいいというならいいぞ!」
「困ってるみたいですしね」
『士道くんの好きにしなよー』
「まったく、仕方ないわね……。別に時間が無いわけでも無いし。この後この埋め合わせができるなら、いいわよ」
「いいだろう。共通財産といえ、それくらいの自由なら許すくらいの器はある」
「同意。士道が参加したいのならそうすればいいのです」
「だーりんのカッコいい姿も見たいですもんねー」
「いざとなれば私の能力使えばいいもんね」
皆、士道の考えに乗ってくれたらしい。顔をキャストチーフの女性に向け直すと女性は複雑な顔をしながら再度尋ねてきた。
「本当にいいのかい?」
「ええ、いいですよ」
了諾の意を言葉で示す士道。他の者も──「仕方ない」という顔をしている者もいるが──全員、大丈夫のようだ。
「──いや、しかし」
「もー霙ちゃんしつこいぜい!本人が良いって言ってるからいいじゃん!」
「あのな──」
なおも苦言を漏らすキャストチーフの女性。流石にここまで苦言を漏らすと何かあるのだろうか、と士道が勘繰る前に女性から再度同意を求められた。
「ねぇ、いいんでしょ?」
「え。はい」
「……分かった。ではお願いするよ」
そう言った瞬間、士道と十香を攫った方
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