第五話「士織ちゃんの受難」
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。その上を何が疾る。
人だ。
士道と同じくらいの年代の少年だ。
それが屋根の上を疾りながら、こちらへと向かってくる。遠目からでもその異常なスピードが見て取れた。思わず立ち止まりそうになる琴里。
少年が走るその先にあるのは屋根の端。「ミーン・ストリート」と「キングダム・プラザ」。その境界線で屋根は途切れている。
少年が屋根の上の最終地点に来た次の瞬間──
「はっ…………」
飛んだ。
飛んだのだ。
跳んだのではない。飛んだのだ。
琴里が素っ頓狂な声を上げるにも仕方ないだろう。少年は屋根の上から幅跳びのような体制で50メートルは離れていようこちらまで飛んでくるのだ。
否。
正確には。
「──何やってんだよ椿ーー!」
「あ、ソウちゃおごっ」
士道と十香を脇に抱え疾走する女性に向かって。
琴里がそれを理解したのは少年の蹴りが女性の顔にクリーンヒットした後であったという。
「お前は何をやっているんだ……」
「いやー。ごめんごめん。つい、理性のブレーキがはずれたっていうか……」
椅子に座っている士道一行の目の前で、先ほどの女性が他の女性に正座させられ反省を促されていた。しかし頭を抱えるスタッフの女性に対し、加害者の女性はケロリとしている。反省してるかしてないかを見てくれだけで見れば、間違いなく「否」だろう。
「全く……お前は相変わらず…。一歩間違えたら警察に捕まってもおかしくないんだぞ。もう少し考えて行動しろ」
そう言いながらため息をつく女性。話によるとこの女性はステージのキャストチーフらしく、ここの責任者としてキャストを纏める立場らしい。
「ホントめんごめんご。霙ちゃんの助けになりたくてさー」
「お前は高校時代からそんな感じだな……君達、本当にすまなかったな。この馬鹿が迷惑をかけて」
そう言って頭を下げるキャストチーフの女性。正座してる方の女性もそれに釣られて土下座する。
「ホントごめんね。この通り!だから許してくれない?」
「いや……まぁいいですけど」
土下座して謝ってまで許さないほど、士道たちもしつこいわけではない。
この場合、士道たちが一番危惧していたのは彼女たちがDEM社やASTの関係者ではないかというところだが、どうやらそれは無いらしい。まだ完全に可能性が消えたわけではないが、ひとまずここは安心していいだろう。
士道が横に振り向くと琴里もそう判断したようだ。一旦、フラクシナスに通常通りの体制に戻るようにインカムを通して小声で神無月に伝える。
「──一つ聞きたいことがあるんだけど、いいかしら
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