暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
道化師が笑う終端
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 霞が茶化す目で言うと、秋斗の言葉を遮って、椅子に逆座りしてゆらゆらと船を漕いでいた明がぽつりと呟く。

「そうなのー! 無茶しに行った日のお昼にも詠ちゃんと手を繋いでるの見たって沙和のとこのクソ虫も言ってたから間違いないの!」
「へぇ、そういえば猪々子にも俺のもんになれとか言ってたかー。ねー、楽進ちゃん?」
「ほんまか凪!?」
「はい。確かに言ってました」
「しかも泣かせた上に秋兄のもんになるって言わせてたしー」
「うっわぁ……秋斗、さすがのウチも引くで」
「……確かに言ったけどさぁ」
「むむむ……風達の心配を余所に敵の女の子を口説いていたわけですか。張コウちゃんとお熱い夜を過ごしたにも関わらず」
「熱い夜っ!? 戦場の狂気に当てられて湧き立つ情欲を鎮める為に一夜だけの切ない関係をっ!? ま、まあ華琳様も火照りを鎮める事があるそうですしそういうのも――」
「待て! 俺は無実だ!」
「ぎゅーっ! て、してくれたのに、やっぱりあたしの事は遊びなの? そうやって他の子の事も弄んでるんでしょ!」
「誤解させる事言うなバカ明!」
「おい徐晃。ちょっと面を貸せ。天幕の裏まで来い」
「行くか! 殴るんだろ!? 絶対行かねぇ!」
「……お前の性根を叩きのめすだけだ!」
「叩きのめしてどうする! 言うなら叩きなおすだろ!? それじゃ殴るつもり満々じゃねぇか! 文醜の事も明の事も深い訳があってだなぁ――――」

 わいわいと騒ぐ皆は戦も終わり、陣幕の中で華琳達の到着を待っている最中である。
 彼が無茶をした事を心配しない彼女達では無く……秋斗が帰って来たのを見つけた沙和が治療しようと言い、凪と明が天幕に引き摺って行き、兵に場所を聞いた風と稟が直ぐ詰りに向かい来て、戦場で合流していた霞と春蘭が一発ぶん殴ってやる為に来た……といった状況であった。
 ちなみに、猪々子と斗詩は現在軟禁してある。武器を取り上げて兵士に監視を命じただけで、全く身動きが取れない状態にしたわけでは無い。さすがに二人を同じ場所に置いてはいないが。

 皆がこうして暖かく迎えてくれた事に感謝が湧き、彼は弄られながらも少しばかり安息を感じていた。
 ただ、ケタケタと笑う赤の少女に皆が違和感を覚えているのも読み取っていた。自然に混ざり込めるように明自身も合わせているが、他の者達が何を聞きたいかなど分かり切っている。
 幾分話が一段落した所で、彼が明に目を向ける。

「……話すか?」
「んにゃ? あー……桂花が来てからでいいや」

 緩く笑う明の瞳に寂寥が宿る。失った痛みを共有出来るのは彼女が一番だ。
 二人の会話に耳をそばだてていたモノは多い。陣幕の何処を探しても明が救出に向かった少女が居ないのだ。連れていた張コウ隊も戦場に立っていたのだから、どう
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