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乱世の確率事象改変
道化師が笑う終端
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者がっ!」
「ぐへっ」
「ほんま……バカやバカやて思うとったけど、其処までバカやとは思わへんかった、で!」
「うぐっ」

 脳天に直撃する春蘭の拳に涙目になった秋斗。追い打ちを掛ける霞の拳も同じ所に当たり、痛みから蹲った。

「もう! 動いちゃダメなの!」
「む、無理言うなよ……」

 そんな彼の治療を甲斐甲斐しく行っていたのは沙和。凪や真桜が怪我をした時ように常備している軟膏を付ける場所がズレてむぅっとむくれる。
 顔の腫れは冷やしてどうにか見れるくらいには治まったモノの、猪々子との殴り合いで傷ついた箇所は其処だけでは無く、身体にも幾つかあった。
 肩にぬりぬりと軟膏を塗られながら、彼は下から二人を涙目で交互に見つめる。

「すまん」

 小さく一言。
 怒られた後の子供のような表情に、霞が呆れたように喉を鳴らし、春蘭が鼻息を一つ鳴らしてそっぽを向く。

「はい、出来たよ」
「ありがと、于禁殿」
「お礼は街に帰ってからでいいの」

 ふふん、と得意げに言う沙和が何を言い含めているかは彼とて分かっている。

「……分かった。娘娘の新作甘味を奢ろう」
「さっすが徐晃さん! 話が早いの! でもー……凪ちゃんと真桜ちゃんも一緒なら嬉しいなーって」
「……ん、了解」

 仲良し三人組で連れて行けと言ってくる辺り、無茶をした事を許すつもりは無いらしい。
 凪に一寸視線を送り、じとり、と見つめられた事で彼は財布を軽くする事を決めた。

「どうせなら皆で会食をするというのは如何でしょうー?」
「店長に城に来て頂くのがいいですね。城の料理人達の勉強にもなりますし」
「おおっ、ええなぁ! 美味い料理に美味い酒、んでわいわい楽しい時間! 最高やんか!」

 乗っかって話す風と稟に霞が合わせ、一様に皆が頷くのを見て彼の顔がさーっと蒼褪める。

「おい待て。んなことしたら俺の給金じゃ足りないんだが?」
「食後の“でざぁと”を一品、お兄さんの自腹で行けばいいのではー?」

 慌てて言うと、風がなんでもない事のように答えたが……

「けっ、甲斐性無しめ」

 頭の上の物体がすかさず貶した。

「てめぇ宝ャ……バラバラに分解してやろうか」
「きゃー、襲われるのですー」
「……だからよ風、棒読みで言っても意味ないだろ……ってお前らなんで引いてやがる!」

 わたわたと手を振る風の仕草に呆れのため息をついても、誰も乗っかってくれない。
 ドン引き、といった様子で皆が一歩下がった。一応振りではあったが。

「そりゃあ街でも官渡でもやたら朔夜とべたべたいちゃいちゃひっついとったし、なぁ?」
「うむ、言い逃れ出来まい」
「ぐ……それは……」
「うわ……やっぱり秋兄って女たらしなんだ」

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