道化師が笑う終端
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、私は行くぞ?」
漫才をし始めた二人に気まずそうな春蘭が声を掛けると、視線が両方そちらに向く。
「行ってらっしゃーい」
「終わらせてきてください」
「うむ」
交互に見やって、コクリと頷いた後、春蘭は馬を駆って行った。
残された場は遠くに戦場の音が聴こえるだけで、しばらくの沈黙が支配していた。
天を仰ぎ、蒼い蒼い空を見たのは二人共。どちらともなくため息を零して、互いの顔を見ずに口を開いたのは……稟。
「残すは二つ、ですね」
「そですねー。雛里ちゃんにも伝令を送りましたし、白馬義従も止まるでしょう」
「敵を皆殺しにするまで止まらないと思いましたが?」
「一応、雛里ちゃんの言う事は聞くみたいですから」
この戦の直前に合流し、真名を交換した少女を思い出して風が応える。
白の旗が遠くで駆けていた。
怨嗟を飼い慣らすのは難しい。一度首輪が解き放たれれば、湧き出る感情に突き動かされて止められなくなるのがほとんどである。
暴虐性はほとんどの人間が持ち寄る業であろう。弱いモノを蹂躙するのは優越感と愉悦と狂気に満たされ、誇りを無くして人を外させる。弱者を虐げる行いは甘美な果実の如く人をケモノへと誘う。
利用しやすい感情ではあっても、最後まで突き詰めてしまうのならそれは賊徒と変わらない。欲望を止められないのなら……華琳の元で天下を目指すには不十分。
「秋斗殿の考えは読めましたか?」
「……多分、欲しいモノが一つ」
急な話題転換にも疑問を零さず、直ぐに会わせて答えを述べた。
風も稟も、このような時は無駄な話をあまりしない。道筋が既に出来ているのなら、答え合わせをするくらいでいい。
「お兄さんは凪ちゃんを副官にしたいんじゃないかと思ってましたが」
「初めから曹操軍に所属していたなら抑え役として向いていたでしょうね」
「華琳様の将を奪うつもりはない、というわけですかー」
「その為にあの二人の内から選ぶつもりでしょう」
はぁ、とまた稟はため息を吐いた。
――曹操軍に所属するのなら凪か沙和を副官として扱えば彼にとっても都合がいいはず……やはり彼は……。
彼の思考の行く先は稟にとって受け入れがたいモノであった。
――あくまで客将で居たいということ。中立の立場と言えば聞こえはいい。けど中途半端と言われればそれまで。この戦の終わりに彼の配下を作ろうとしている。そして彼自身も……
忠を誓い、心命を賭して華琳に全てを捧げるのが何より。しかし彼はそれをしない。
劉備軍に所属していたときよりもさらに曖昧ではっきりとしない位置づけ。ある意味で華琳の同盟相手とも取れる立ち位置。
認められるかと言われれば否。しかし“あの大地”の扱い方やこの後に行う事を思えば……是と
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