第三話「精霊と電脳の剣士、幻想殺しと橙茶色の少女」
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けている。
それ故か。上条は人の不幸に対して敏感である。自分が不幸だからこそ、そのような不幸を他人が味わっているのが我慢できないのだ。
今までも上条は、誰かの不幸を何度も目撃している。そんな時、彼は自分に災難が降りかかることを承知しながらも、必ず、その不幸に介入してきた。
大怪我なんて何百回もした。死にかけたことも一度や二度ではない。たった一度だけだが、自分の行為を後悔したこともある。
ただ「許せない」。目の前の、不幸に堪えてる人、不幸を我慢している人を黙って見ていることを許せない。
「おーい、探したぞ」
その気持ちを糧に、今日も上条当麻は理不尽な「不幸」を壊すため、右の手を強く握る。
「えっ、お兄ちゃんは……?」
「あぁ!?誰だよお前!」
「この子の知り合いだよ…嫌だなぁ。忘れられちゃうなんて上条さん、ちょっとショックですよ」
「え……」
「何だぁテメェ?なんか文句でもあンのかよ」
「…………はぁ」
元からダメ元だったが、やはり「知り合いのフリして自然にこの場から連れ出す作戦」は成功しなかった。まぁ当たり前だろう。
「ったく…お前たちもこんな小さな子を相手に何やってるんだよ」
「このっ……!せっかくのところを邪魔しやがって」
「おい、こいつイタイ目合わないとわからんらしいぜ」
痛い目に会うのは嫌だが仕方が無い。ここは自分が不良を引きつけて、少女を逃がすことにしよう。
「ナメタ真似したお前が悪いんだよ。まぁ殺しはしないから安心しな」
「──俺がこいつらを惹きつけるから。そのうちに逃げろ」
「…………」
「分かったな?」
少女に小さな声でそう呟き、「やれるもんならかかってこいよ」と、上条がそう不良達を挑発しようとした。
その時だった。
「…………プッ、アハハ」
「へっ?」
「あ?」
「何だ?」
突然、少女が笑い始めたのだ。
「プフフ……あ、ごめんね。「俺がこいつらを惹きつけるから、そのうちに逃げろ」って、なんかあの人にそっくりで」
「…………」
なんでだろう。先ほどまでは幼い少女という感じっていうか世間知らずな感じがしていた上条は瞬きをしてしまった。不良たちも同じ様でポカンとした顔をしている。
「子供だと思って誑かしてきたバカほどじゃないけど、あなたもそうとうなバカだね。ぷふぅ」
どうやらこの少女、今まで小さな幼女のフリをしていたようだ。猫かぶりとはこういうことを言うのだろうか。
「…………オイ、バカって誰のことだ?えぇ?」
「ガキだから手を出さないとか思ってんだったら大間違いだぞクソガキ」
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