暁 〜小説投稿サイト〜
Lirica(リリカ)
意味と狂人の伝説――収相におけるナエーズ――
―7―
[6/6]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
でしょう?」
「理解できんな。あんた、まだまだ楽しい事がたくさんある歳だろうよ。残って何になる?」
「帰って何になるというのです」
 人生の楽しみ。とりわけ若い娘としての楽しみ。そのようなものを得るには、ラプサーラは疲れすぎていた。そして老いていた。他の十代の娘達に比べて、誰より。
「意味などございません。どちらを選んでも」
「意味がないなら尚更だ。何でまたナエーズに残る?」
「あなたはどうなんです、軍人さん。この戦争に意味があるとでも?」
「意味もなく戦えるような奴は狂人だ」
 下士官は少し迷った。
「俺達はナエーズの安定のため――」
「そういう事ではございません。そんな事を聞いているんじゃない。もっと根源の――もっと本質的な――」
 ラプサーラは、自分の言おうとしている事が、あまりにも要領を得ていない事に気付き、口を閉ざした。下士官は肩を竦めた。
 二人は共に廊下に出た。
「あんたがナエーズに残る理由は師団長も聞くだろう」
 下士官はある大きな扉の前で立ち止まり、囁いた。
「はっきりした答えを言うように。師団長は恐ろしい人だ」
 扉が開かれた。ラプサーラの顔に、白い光が差した。



[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ