いざ、世界へ といってもまずは里帰り
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てもいい。
前々からずっと思っていた。
私は嬉しいんだ。
ここまでお前がここまで強くなってくれた事が。」
確かにその通りだ。
師匠といつもの通り打ち合っても、その速度を完全に見切れるくらいになった。
最初と比べれば格段に成長した事が自分でも分かる。
あまりこんな事を言いたくないが、今の俺なら師匠に勝てる。
「そろそろ一人で旅を出て、身の振り方を考えなければならない。
私はどこかに仕えるつもりはない。
このまま身体の限界まで旅をするつもりだ。
だが、縁は違う。
お前は王になるのだろう?
なら、ここでお別れだ。」
「でも、あまりに急すぎますよ。」
「思い至ったら吉日。
そうだろう。」
師匠の言葉に俺は何も答えなかった。
でも、いつかはこうなる日が来る。
俺は王になるって誓った。
その為に色んな人を殺してきた。
ここが俺の出発地点なのなら。
俯く顔を上げて師匠の眼を見る。
そして、土下座するように頭を下げて言う。
「今までご指導ありがとうございました。」
「お前が天下に轟く王になる事を私は期待している。」
旅の準備に取り掛かる俺に師匠は何かを渡してくる。
布で包まれた何かを渡され、首を傾げる。
開けてみると結構な額のお金が包まれていた。
「師匠。」
「卒業祝いだ。
持っていけ。」
俺はもう一度深く頭を下げる。
すると、師匠はついて来なさいと言って街に向かって歩いて行く。
その後について行くと、入り口付近に一頭の馬がいた。
その傍には商人らしき人が手綱を持っている。
師匠が声をかけると商人は軽く会釈をして、馬の手綱を師匠に渡す。
そして、その手綱を俺に渡してきた。
「これも卒業祝いだ。
馬がないとこれからの旅がしんどいだろう。」
思い至ったら吉日と師匠は言っていたが、おそらく嘘だろう。
この馬の準備といいお金をいい、前々から決めていたのだろう。
俺は手綱を握って頭を下げようとするが、師匠に止められる。
「お前の感謝の気持ちは分かったからもうよせ。
これから王になる男だろう。
簡単に頭を下げてどうする。」
少し冗談まじりで言う。
それを聞いて少し驚くが、俺も笑顔で言う。
「そうですね。
俺は王になるのですから。」
師匠と俺はそれぞれの馬に乗り込む。
「これからどうする?」
「一旦、村に帰ります。
それからもう一度旅をしてみるつもりです。」
師匠は俺に拳を向けてくる。
自分の左手で拳を作って師匠の拳と突き合せる。
俺達は言葉をかわす事なく、背中を向ける。
今日を持って俺は師匠の元を離れ、一人で旅をする。
自分の目指す王になる為に。
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