外伝:色褪せぬ過去よ
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しい最期だったかもしれない。それでも悲哀は噴水のようにとめどなく溢れた。
そんな彼の遺書が共有ストレージに入っているのを思い出したのは、それから数日後だった。
彼は生き残ることを第一に考えていたが、自分が死ぬ可能性も排除していなかった。録音結晶を遺書として共有ストレージに入れていると、前に聞いたのを思い出したのだ。
結晶の中の彼はこう言った。
『俺が死んだら……自惚れじゃなきゃ、お前は凄く悲しむと思う。いや、悲しんでくれると思う。でもその悲しみに負けないで欲しい。勝たなくてもいいから、生き残るっていう俺達の目標を正しく継いでほしい。……無責任な言い方だよな、こんなの。でも、乗り越えて。俺の我儘を一度だけ聞いてくれ――』
泣きながら私はそれに頷いた。
そして、乗り越えるために彼との思い出を風化させようとした。
幸せだった頃があるからこそ、前へ進めなくなる――そう思っていたからだ。
でもそんなのは間違いだった。きっと彼が生きて隣にいたら、ドジな奴だと笑いながら肩を叩いたに違いない。それほどに単純で馬鹿馬鹿しい思い違いだった。抱え込んだそれは重荷ではなく、受け入れるべきを受け入れていなかっただけだった。
忘れる必要など無いのだ。負けないために彼を切り離すのではなく、彼と生きてきた過去に支えられていることを忘れなければそれで良かったんだ。だってその遺言を言った彼も、思い出の中の彼も、確かにあの時は生きていたのだから。
生きた証を消す必要などない。想うことを止める必要などない。
「私は彼が大好きで、愛していた。それは真実だから……」
彼と交わした約束はもう守れないけれど、それでも一緒に生きようとしてくれた彼の姿は、今も私の心の中で生きている。それが全ての答えだ。
「……という感じで、私もまた彼の歌に救われてしまったわけ」
ALO内で旧知の友人にからお茶会の招待を受けた私は、それに参加しながらもそのように話を締めた。
聞いていた女子達は、少々重い話だったのもあってか聞き入っていた。その中の一人――友達の友達であるユウキちゃんが口を開く。
「……聞けば聞くほど、お兄さんの選曲って絶妙なことろを突いてくるよね」
「ええそうね。そう、本当絶妙な所をついてくるのよね……!」
失恋直後に失恋ソングを歌われるという追い打ちをかけられたらしいリズベットは結構ご立腹なようで、紅茶の入ったカップを怒りでカタカタ震わせている。
「まぁまぁリズ、ブルハも悪気があった訳じゃないんだから……」
「分かってるわよ!っていうかアスナ!前から思ってたんだけどアンタちょっとブルハに甘くない!?実は浮気してんじゃないでしょうね!つーかしろ!」
「しないわよ!!というかあの人は甘やかさないと死んでしまう
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