第二部 文化祭
第58話
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つらそうで、それでいて真剣な彼女を前にして、言葉を濁そうとは到底思えなかった。しかしどう説明していいのかもわからないので、俺は口を引き結んだまま小さく頭を振った。
「ほら、ね。……どうしてキリトくんが自分を責めているのかはわからない。でも、何もかも自分で背負い込むのはやめようよ」
「……」
黙り込むことしかできない。アスナは柔らかな微笑をたたえ、俺の両手を自分の手で包み込んだ。
「取り敢えずさ、先生に訊くだけ訊いてみようよ。事情がわからないと、モヤモヤしっ放しでしょう?」
暫の間呆気にとられていた俺が無言でこくりと頷くのを確認すると、栗色の髪を揺らし、目の前の少女は俺の手を引いて歩き出した。
職員室に行くのは、昔からあまり好きではない。それは、生徒会副会長としてもはや通い慣れたはずのアスナとて例外ではなかった。
しかし、隣に俺がいる以上、変に動揺するわけにはいかない。そう思ったのか思わずしてか、アスナはきりっとした表情を浮かべ、丁寧な仕草で職員室の扉を開けた。
「失礼します。2−Aの結城明日奈です」
育ちのよさそうなお辞儀をしてから、勝手知ったる部屋の中を堂々と横切っていく。俺はアスナの後ろについて歩いているわけだが、何せ彼女の足が少しばかり早めに動いていたもので、歩幅を合わせるのが大変だった。
目的である人物の座る席の前でふわりと立ち止まると、きびきびとした動作で再び小さくお辞儀をした。次いで、口を開く。
「2−Cの担任は確かあなたでしたよね、先生。先生のクラスの桜まりあさんについて、少しお訊ねしてもよろしいでしょうか」
まりあの担任であるらしい若い女性教師──俺はまりあのクラスを知らなかったので、今知ったところなのだが──は手に持っていたコーヒーカップを机に置くと、「どうぞ」と短く返答した。
「最近、桜さんを見掛けません。夜には帰るはずの寮内にも、姿がありませんでした。文化祭以来ずっと学校を休んでいるそうですが、何かあったのでしょうか?」
「ああ……そのことね」
女性教師は微笑を浮かべ、小さく頷く。
「あなた達は知らないでしょうけれど、実はあの日、音楽家のヴェルディさんがうちの文化祭に来てらしたのよ。桜さん、文化祭でピアノ弾いてたでしょう? それに、あなた達の歌を作詞作曲したのも桜さんらしいじゃない。なんとあの子ったら、その音楽センスをヴェルディさんに買われちゃったのよ。あの子はとんでもない逸材だ、もっと本格的に勉強するべきだって。ぜひ弟子になってほしいって〜!」
一気に捲し立てた先生は、嬉しそうにアスナの両手を握ってぶんぶん振った。苦笑するアスナ。先生は我に返ったように彼女の手をぱっと離すと、こほん、と一息ついてから再び
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