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渦巻く滄海 紅き空 【上】
八十二 闇からの誘い
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しかし結果は。

良かれと思っての行動が裏目に出た。
故に当初のイタチの想いを酌んで、ナルトはサスケの復讐対象になる事を選んだ。
わざと復讐の念を煽るような言葉を告げ、そうする事でサスケが抱く恨みや憎しみを全て自分のみに向けられるよう仕向けたのだ。


悲惨で過酷な道を選んだにも拘らず、颯爽と駆けるナルトの背中を白は眩しげに見つめた。
ナルトの為を想ったとは言え、身勝手な行動をした自身を責めもせず、逆に宥めて謝礼した彼に、白は改めてナルトの器の大きさを思い知った。そうして同時にこうも思ったのだ。

(ナルトくんは―――優しすぎます)


計り知れない優しさは甘い蜜となり、時に毒になる。
自分自身がナルトの優しさに溺れていると自覚している故に、白はナルトの身を案じた。
深き森の静けさの中で。












その日、里は静かだった。不気味なほどに。

里人達が穏やかな朝を迎える一方、『死の森』で意識を取り戻したサスケの目覚めは最悪だった。
俯いたまま、唇を噛み締める。

伏せた顔の陰影に隠された鋭き瞳。
殺意に満ちたその眼を目敏く見つけ、少年の一人が「いい眼だ」と笑った。


サスケを高みから見下ろす四人の少年少女。
木ノ葉の忍びらしくない雰囲気を纏う彼らは、皆一様にサスケを狙っていた。
サスケの姿を目にした途端、行動に移そうとする一人をもう一人が「ちょっと待て」と制止する。

「アイツの師匠はコピー忍者のカカシぜよ。一応周囲を確認してから…」
「ハッ、へなちょこが。お前みたいなクソ野郎じゃ無理な相手でも、ウチならやれる」
「ふ、どうだかね?」
「いちいち口出しするな。ゲスヤローが!」

唐突に始まった口喧嘩。中でも一際目立つのは、女でありながら男以上に口が悪い少女。
ゲス呼ばわりされた少年が顔を顰める傍ら、恰幅の良い少年が少女を諌めた。

「多由也。女がそういう言葉をあんまり…」
「うるせぇよ、デブ。ウチに意見出来るのはナルトだけだ。ひっこんでろ」
あっさり少女に言い返されたものの、いつものやり取りなのか肩を竦める少年。
仲が良いのか悪いのか、いまいち判らない彼ら四人組は、以前『木ノ葉崩し』にて三代目火影を【四紫炎陣】の結界に閉じ込めた子ども達であった。


「――――そろそろ行くぞ」

そんな四人の会話を更に遙か高所から聞き流していた少年が、ぽつり呟く。
少女以外の少年達がびくりと肩を跳ねさせる中、五人目の少年――君麻呂は冷やかな眼差しで計画開始の宣言をした。


「時間だ」

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