八十二 闇からの誘い
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、それを配慮してもサスケは今まで以上に鍛錬しなくなった。強さを求めなくなった……『イタチを倒す』という野望を俺が消してしまったから」
「だから―――自分を恨むように仕組んだんですか?」
白の問いに、ナルトは顔を伏せた。それが答えだった。
「だからって…っ!だからって、ナルトくんが憎まれる筋合いは無い!!だって貴方はイタチさんを…ッ」
「白」
名を呼ばれ、白は口を噤んだ。これ以上は言わせないと、ナルトの視線が語っていた。
「結果がどうであれ、イタチに隙を生ませたのは俺の失態だ」
サスケの野望を『うずまきナルトを殺す』事に挿げ替えた張本人。
己自身に殺意を向ける事でサスケを生かそうというイタチが取った方法と同じ道をナルトは選んだ。そうする事でサスケは強さを求める。しかも今度は実の兄ではなく、赤の他人が仇だ。
それはつまり――――遠慮なく、ナルトを恨み憎み、殺せるという事実を指す。
「サスケには悪いと思っている。だから彼は俺に攻撃する権利がある。殺されても仕方がない事を俺はしたのだから」
そこで一端言葉を切ると、ナルトは自身の身体を見下ろした。
血で染まった紅白の羽織から覗き見える傷跡。あの時サスケがトドメを刺す事を躊躇して、腕をズラしていなければ現在脇腹に残る傷は確実に胸にあっただろう。
(まぁ…そう簡単に死ぬわけにはいかないがな)
そうしてやにわに、ナルトは白に微笑んだ。
「白…気持ちは嬉しいよ。ありがとう」
突然の謝礼に一瞬戸惑った白だが、すぐにその意味を見出す。
当初ナルトより先にサスケを見つけようと白は躍起になった。何故ならば、彼は勘でナルトが自分を犠牲にするだろうと察していたからだ。
イタチの一件で消沈していたナルトにこれ以上負担を掛けたくなかった。だからこそ白はサスケを殺そうとした。サスケの殺気が敬愛するナルトに向かうのが我慢できなかった。
故にサスケとの戦闘中、白はサスケに言ったのだ。――――君が憎むのはこの僕だ、と。
たとえ白自身がナルトに恨まれようとも…。
(ナルトくんが憎まれるくらいなら…僕は貴方に殺されても良かったのに)
サスケを殺した事でナルトに殺されるような結果となっても、白はそれを受け入れる覚悟があった。
だがそのような白の思考を打ち消すかのように、ナルトは困ったように笑っただけだった。
「今回の結果は、イタチとサスケを和解させた俺に責任がある。だから白が気に病む必要は無いんだよ」
似ているからこそ、同族嫌悪によりナルトはイタチを嫌っていた。自身と重ね合わせる事で、イタチとサスケの確執に心を痛めていた。
兄弟仲を取り持つ事でナルトは己自身を慰めていたのだと自嘲する。自分が出来ない事をイタチとサスケにはやってほしかった……
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