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渦巻く滄海 紅き空 【上】
八十二 闇からの誘い
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園から離れゆく。


この時の少年達は、何の気も無しに伝えたナルへの助言が、これから先、呪いの如く彼女を縛りつけるようになるとは思いも寄らなかったのだった。













「何故、真実を伝えなかったのです?」
背後からのもっともな質問に、ナルトは苦笑を零した。

既に木ノ葉の里から離れた森の中。
鬱蒼と生い茂る木々の合間を縫うように駆けながら、白は痛ましげにナルトの脇腹を見つめた。

術で強制的に凍らせる事で止めた血。だが今度は凍傷により壊死する可能性がある。
白の視線に気づいたのか、ナルトが「ああ」と今気づいたかのように手を脇腹に翳した。走りながらだというのに、次の瞬間には脇腹に穿たれた傷は消えていた。

だが消せるにも拘らずあえて傷跡を残しているナルトに、白は益々悲痛な声で問う。
「どうして、本当のことを仰らなかったんですか?」

ナルトは振り返らない。立ち止まらない。けれど確かに白の言葉に耳を傾けている。
だからこそ白は矢継ぎ早に質問を繰り返した。

「その傷だってそうです。ナルトくんならばサスケくんの術を避けられた。だけど貴方は攻撃をあえて受けた……」
前方を走る羽織は紅く染まっている。一部分のみ黒ずんだ羽織の裾が白の視界を踊った。


凄まじい殺気と共に穿たれた術――サスケの【千鳥】。
普通の忍びならば回避不可能であるソレだが、ナルトの技量ならば確実にかわす事が出来た。
間近でずっと見てきたからわかる。
サスケからの攻撃をナルトがわざと受け止めたという事を。

「――罪滅ぼしのおつもり、ですか?」

ぽつり、と独り言のように呟かれた問いに、ナルトはようやく振り向いた。憂色を漂わせる白の眼差しを受け、口許に苦笑を湛える。
「……べつにそういうつもりじゃないよ」
音も無く枝を蹴って、ナルトは静かに瞳を閉ざす。

「俺はただ、サスケの野心を煽っただけだ」
不可解な答えに白が眉を顰める。納得出来ぬという白の疑問に、淡々とナルトは答えた。

「……人は目標や目的を成し遂げようと努力する。サスケの場合、イタチへの復讐だった。だからこそ彼は日々鍛錬した。強くなろうと努力していた……俺がイタチと引き合わせるまでは」
「しかし、それは…っ」
「ああ…俺も最初はそうする事が彼ら兄弟にとって最も最良の道だと思っていた。だがその反面、人は安心すると共に気が緩む。今まで己に厳しく慎重に生きていたイタチでさえも隙が出来てしまった…」

深い森の中へ溶け込むように、ナルトの静かな声が響く。決して大きくも小さくもない、だがとてつもなく切なさに満ちた声音が白の耳朶を強く打った。

「サスケも然り。ダンゾウの火影就任阻止の件でそれどころじゃなかったかもしれないが
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