二十九話:俺はあと二回変身を残している
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そう言うや否や、叫びながら無茶苦茶にナイフを振り回して来るリドウ。俺はそれを槍で防ぎながらリドウの目を見る。その目は孤独に憑りつかれていて、酷く冷たく寂しげに見えた。
兄さんが同じ目をしていたというのなら……きっと同じ理由なんだろうな。
リドウ……お前はただ―――
「俺はお前の周りにいる奴らを全員消してあの時のユリウスと同じ目にしてやりたかったんだよ! 言えよ、ルドガー君。お前だって過去に戻りたくてしょうがないんだろ! 失った者を取り戻すために全部捨てちまえよ!」
俺はしばらく黙ってナイフと槍を打ち合わせながらリドウの言葉を聞いていたが、ついに堪え切れなくなってリドウの手に持つナイフを吹き飛ばし、そのまま腕を掴みリドウを叩き伏せた。
そしてあの世界で最後に戦った時のように見下ろす。
「リドウ……本当は、お前はだだ―――1人ぼっちで寂しかっただけなんだな」
その言葉に激しく顔を歪まし苦しみの表情を浮かべるリドウ。
一人で寂しかったから同じ目をした同族を求めた。かつてはそれが兄さんだった。でも兄さんは俺という家族が出来て一人じゃなくなった。だから、リドウは、今度は俺を同じ目をした同族にしようとした。
考えて見ればこの世界で初めてリドウと会った時こいつは偶然ではなく必然的に俺に会った。
こいつは俺がこの世界で暮らしていることをだいぶ前から知っていたんだろうな。
そして、俺を同族にするためにバルパーやコカビエルと一緒に計画を立てた。
俺を孤独にして孤独から抜け出すために……こんなはた迷惑なやり方でな。
まあ、俺がもし“過去”を選んでいたらこいつみたいなことをしていたかもしれないけどな。
でも、俺とこいつは違う。俺は押さえつけていた手をどけてから口を開き、
ハッキリとした口調で伝える。
「リドウ……俺は過去を取り戻すわけでもなく、未来に生きていくわけでもない。
俺は“今”を生きるためにこの槍を振るうって決めたんだ。
そして、俺は新しくできた大切な人を俺の全てを賭けて守ると選択した」
「何だって、お前もユリウスも他人なんかの為に命を賭けられるんだよ!?」
よろよろと立ち上がりながらどこからか出したナイフを再び手に持ち叫ぶ様に聞いてくるリドウ。どうしてか? ……まず、お前は前提から間違っているんだよ。
「リドウ……お前は一つ、間違っている。
人は―――誰かの為でなければ命を賭けられない」
兄さんが俺の為に命をかけてくれたように、ミラがエルの為に命をかけたように、
俺がエルの為に―――全てを捨てたように!
人は誰かの為に命をかける。それは自己犠牲でも何でもない、ただ己の大切な者の為に全てを捧げたいというエゴだ。そして、そのエゴこそが
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