二十九話:俺はあと二回変身を残している
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面から俺の槍とリドウの両手の医療ナイフがぶつかり合う。
「「うおおおおおっ!」」
雄叫びを上げてぶつかり合うと同時に激しい火花と衝撃波が生み出される。その衝撃に思わず後ろに下がりそうになるが根性で踏みとどまり逆にそのまま一気にリドウを押し返す。
リドウはそのことに若干驚きながらもすぐに体勢を立て直して再び俺に斬りかかって来る。
だが俺には当たらない。俺はまず、右上から振り下ろされるナイフを、体を捻るようにして避け、その捻りを利用して反動をつけた槍を横に薙ぎ払うように振るう。
それに反応したリドウは縦に一回転するように飛んでそれを躱す。だが、避けられるのは予想できていたのですぐさま詰め寄り勢いをそのままに蹴りつける。流石のリドウもそれは避けきれなかったが吹き飛ばされると同時に何とか受け身をとってすぐに立ち上がっていた。
そう言えば、戦っていて気づかなかったけどいつの間にかイッセー達と離れてしまったな……
まあ、あいつらを信じるしかないか。
「やれやれ……兄貴に年上は敬えって習わなかったのかよ、ルドガー君」
「兄さんなら、お前に対しては鉛玉をぶち込めって教えそうだけどな。
……リドウ、結局の所、お前の目的はなんなんだ」
「目的なんて大それたものじゃないさ。この町を中心にドデカい花火を上げてここいら一帯の人間をぱーっと皆殺しにしたら面白そうだなって思っているだけさ」
「……自分の存在を誰かに認めてもらうためにか?」
俺がそう言うと、飄々とした表情が一変して苦々しげに顔を歪ませるリドウ。
こいつは恵まれているように見えても全く恵まれていないんだ。誰にも認められていないから誰かに、より多くの人に認めてもらうために出世しようとしていた。
自分が偉くなれば他人に認めてもらえるとそう信じて今まで必死に生きてきたんだろうな……。
でも、あいつも俺も一度死んでこの世界に来た。今まで築き上げてきた全ての物を失って、また一からスタートだ。ちょっとばかり自暴自棄になってもなんらおかしいことは無い。
今までのあいつは裏でテロリストとつるむことはあっても、決して自分に悪名が立たないようにしていた。そんなあいつが堂々と出てきているということは、自分を認めさせるためなら悪名であっても構わないと思うようになったんだろうな。まあ……死んでまでクルスニク一族に縛られているんじゃ自暴自棄にもなるよな。俺はそう思って憐みの視線をリドウに向ける。
「まただ…っ。またその目だ! ユリウスもお前も同じような目で俺を見やがる!
俺はその目が大嫌いなんだよ。ユリウスも最初は俺なんかと同じ目をしていたのによ。
気づいたらその目で俺を見る様になっていた……俺はそれが堪らなく気に入らないんだよ!」
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