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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第21話 君が為
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そんな単純な理由を忘れていたよ。」
「いえ、実際はそんなモノですよ―――その壁は生半可ではない。」

「凄まじい執念だよ―――まったく、難儀な男と縁を結んだものだ。」
「しかし中佐、篁中尉と彼の婚姻はやはり……政略的な可能性が強いです。」

「ああ、俺たちへの牽制と警告だよ。簡単に言えば人質だ―――俺たちでももう数年は分家連中を抑えられた。その間に篁中尉がXFJ計画で実績を積めば、篁家当主の座は固かっただろう。」

 唯依は篁家次期当主として前線に赴くことが許されず、後方任務ばかりだ。
 初陣の京都防衛線の折とて補給基地の防衛、云わば後方だった。実戦へ赴く前提ではなかったのだ。
 それは今でも変わらない。彼女が希望通り前線へと赴ける可能性は限りなく低い。

 今のような飼い殺しでは、満足な実績を上げる事は出来ず、祐唯と栴納の成した仕儀は報われずに終わる―――そんな状況を打開する起死回生の一策だったのだが、なかなか簡単にはいかない。

「だが、これはアイツが選んだ道だ―――子供の成長は早いな。」

 男―――巌谷 榮二は自分が幼き頃から知る少女によって自身の計画に齟齬が発生し始めていたのを朧気ながら予感するのだった。










「ん……」

 瞼を通しても感じられる茜色。鼻孔を擽る夕暮れの匂い。

「ああ、起こしてしまったか……」
「父様―――」

 声が降ってくる、自分にこんなにも優しい声で語り掛けてくれる(ひと)はきっと父様に違いない――――そう思った唯依。
 だが、その直後だった。脳裏に横浜の空を走る二つの光球、そして光球から生まれる横浜の大地を抉った黒い太陽……G弾のさく裂。

 違う、違う、違う――――父様はもういない。何処にもこの世界のどこにももう居ないのだ。
 ならば誰だ、自分にこんな風に声を掛けてくれる存在は。

「すまんな唯依。」

 ぼやけた視界が鮮明になる。目に入るのは夕焼けに染まった青―――自分の婚約者となったはずの男性(ひと)だった。
 彼は、自分を起こしてしまったという意味か、自分が思い込んでしまった人間と違うという意味か―――或いはその両方。どれともつかない意味の謝罪を口にする。

「忠亮さん―――わっ!?」
「――大人しくしていろ、しばしな。」

 そして気付く、何時の間にか自分の体勢が彼が寝入ってしまう前と入れ替わっていることに。
 自分は男の人に膝枕をされて寝入ってしまっていたのだ。急いで起き上がろうとするもそれは彼に止められる―――物理的に。

 姿勢と体重、それに地力の圧倒的な違いにより強引に膝枕を継続させられた唯依、だがその押さえつける腕が唯依の頭を撫でた。

「むぅ……強引ですよ。」
「たまには強引
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