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会見
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人になることも、ヤンは強制したわけではない。ユリアンから相談された時には、そう焦ることはないと止めた。
 自分がタダで歴史を学ぶ為に士官学校に入学し、食うために軍人になっただけに、ユリアンにはそんな思いをさせたくはなくて、保護者を引き受けた時から養育費は返すつもりでいたくらいだ。
「……私の被保護者は、たぶん、満足してくれていると思いますし」
 その言葉にラインハルトは唇の両端を僅かにあげて笑みの形を作る。それの意味はヤンも察することができた。
「その失礼ですが、閣下はご結婚はまだ考えてはおられないのですか?」
 ヤンの問いにラインハルトは低く笑った。
「卿も皆と同じことを言うのか。意外だったな」
 それ以上ワインを飲む気はないのか、指先はグラスの縁をなぞり続けている。
「一生独身で過ごす、とは言わぬ。だがようやく銀河を統一したばかりの私に次々と難題を持ち込むことはなかろう」
 銀河の覇者になるのと、結婚はラインハルトにとっては同レベルらしい。
 いや、今すぐ結婚するか、もう一度銀河を手中に納めるべく兵を進めるか、どちらかの選択を迫られたら、迷う事なく彼は出陣を選ぶだろう。次こそは譲られた勝利ではなく、自分の手で勝利をもぎ取る為にも。
「しかし閣下には後継者が必要かと思います。いえ、私ごときが申し上げることではありませんが」
「後継者、か……」
「ええ、君主政治では不可欠なことかと」
「私が必ずしも自分の子供を皇帝の座につけようとは思っていない、と言ったら卿はどうする?」
 ラインハルトの答えは銀河帝国皇帝とは思えないもので、ヤンも驚きが隠せない。
「それは、その……閣下がご結婚を考えておられない、という意味とは」
「それは違う。現在具体的な予定はないが、結婚する意志はある、一応はな」
 その声の響きは楽しげだった。ヤンが予想に違わず驚いていることにも満足しているらしい。
「私の子供が皇帝の器でなければ無理に皇帝にさせなくてもよい」
「閣下……」
 ラインハルトが冗談や思いつきを言っているのではないことは、その顔付きと声色が現していた。
「ルドルフは確かに稀に見る才能の持ち主で、実力で銀河を手中に収めた。だが、その子孫が同じだけの才を持つわけではない」
 ヤンの震える指がグラスを倒したが、中身がすでに空だった為、非音楽的な音を奏でただけで、大理石のテーブルを汚すことはなかった。
「私の子孫とて同じことだ」
「ですが、しかし……」
「今でもそうだ。私よりも力あるものがいれば、皇帝になればよい」
 そう言うとラインハルトはテーブル越しにヤンの方に身を乗り出して来た。
「どうだ。今ここで私を倒せば、銀河は卿のものになるぞ」
「な、何ということを」
「二人きりだ。武器は……」
 ちらりと執務机に視線をやる
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