会見
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を伸ばしていた。
旗艦でも自席に座らず、コンソールの上に胡座をかいていたのだから、急に行儀よくもなれない。
ソファという種類の椅子は鷹揚な座り方をするのが正しいのだろうと今さらながら発見したヤンだった。それを実践することができたのは、多少なりともアルコールの効果があったのかも知れない。
「ミュラーに聞いたのだが酒を飲んでいたそうだな」
「はい、手持ち無沙汰でしたから」
飲酒していたことは報告されているのだろう。嘘をついても仕方ないし、必要もない。
ひょっとして顔に出ているのだろうか、と頬にふれてみたが、熱いかどうかはわからなかった。尤も掌と頬が同じくらい熱を帯びていれば熱くは感じないだろう。
「閣下はお酒は召し上がらないのですか?」
「飲まないことはない。毎回の食事にワインを付けたりはせぬが」
「はあ……ワインですか」
「卿はワインは飲まないのか?」
「いえ、私は酒なら何でも好きです」
タイミングを見計らったように扉が叩かれる。
「ワインをお持ちしまいました」
先ほどは幼年学校の生徒らしい少年がコーヒーを運んできたが、ワインとグラスを乗せたトレイを運んできたのはミュラーだった。
「私にはワインのことはわからないので適当に選んでもらった」
テーブルにおかれたワインのボトルをヤンに見せる。もちろんヤンにもそのラベルに書かれている文字は幾つかの単語が辛うじて読めるだけだし、意味となるとチンプンカンプンだった。
ミュラーがやや危なっかしい手つきでワインを開けると静かにグラスに注ぐ。
「四七〇年ものだそうです」
ヤンは感嘆のため息をついたが、ラインハルトは至極当然のような顔をしてワイングラスの足を持った。
「乾杯」
ラインハルトの涼やかな声に唱和して、ヤンは軽くグラスの縁を当てる。
最初は緊張のあまり味がわからないかも、と心配したが、その前に飲んでいたウィスキーの効果か、美味しい酒は状況を選ばないのか、鼻孔をくすぐりながら喉を落ちていくワインの味にヤンは相好を崩した。
「卿は本当に酒が好きらしいな」
ヤンのグラスがすぐに空いたことを指しているらしい。
「美味しいので、つい……閣下はあまりあがられてないようですが」
ラインハルトのグラスは最初に口をつけた後、あまり減っているように見えない。
「酒は嗜む程度でよい」
そう言ってから気づいたようにボトルに手を伸ばすと、ヤンのグラスにワインを注ごうとした。
「だがそれはあくまで私個人の主義であるのだから卿が気にする必要はない。開けてしまったからには飲まないと勿体ないだろう」
注ぎ易いようにグラスを持とうとしたが、ワインを注がれる時はグラスを持たないのがマナーだと思い出す。注がれるワインを見ながら、このワインもいいものだが、銀河帝国皇帝に給
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