プロローグ/それが一番の後悔で
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った。
眼前に迫る、ガジェットの刃。
二人は避けることができなかった。
――――目を瞑って数秒。
なのはの頬を、熱を帯びた液体が伝う。
生温い液体が汗なのか分からず、そして自分が死んでいないことを理解し、なのはは目を開けた。
「ぐ……はっ」
白い布が紅い液体の色に染められ、液体の流出点には分厚い刃物がむき出しになっていた。
思考が空白に染まった。
何があったのか、理解に遅れた。
だけど、顔を上げて見れば、“現実”は少女に突き刺さる。
「――――きゃあああああああああああああああああああああッ!!!」
声を上げた。
怖い。
怖い。
怖い。
恐怖が思考を支配していく。
全身を支配し、感覚を奪っていく。
彼が、彼が自分たちを庇ってガジェットの刃物を受けたのだ。
「は、っ……ぅあっく……がはっ!」
吐血。
雪で白く染まっていた地面に、紅い液体が垂れる。
鼻を貫く鉄臭さが、彼の様態の悪さを伝えていく。
だが、しかし、彼はあくまでも笑顔で二人の方を振り向いた。
「っぅ……は、はは……ちょ、っと……待っ…て、ろ」
それが作り笑顔だってことくらい、なのはとヴィータにはわかっていた。
それなのに、なぜ。
体は震え、固まり、動けなかった。
何がそうさせているのか、考えればいくつもの原因が浮かび上がった。
そして浮かび上がったことへの後悔と罪悪感が、少女達の言葉を奪っていく。
だが、彼は責めなかった。
あくまでも笑顔で――――
「大丈夫、だかっ、ら」
大丈夫。
口癖のように、彼はそう言った。
「っ……」
彼は突き刺さった刃物を無視し、激痛に耐え、その身体を強引/無理やりに動かして、ガジェットと戦った。
「いくぞ……」
そう言って彼の|武器/刀に、彼の魔力色である白銀の光が収束していくのが分かった。
そしてなのはは誰よりも、彼が何をしようとしているのかを悟り、そして叫んだ。
「ダメ……そんなことしたら、――――っ!?」
「スターダスト……」
「やめ――――てぇええええええええええ!!」
「ブレイカァアアアアアアアアッ!!!」
彼が刀を横薙ぎに振った瞬間、残影は強い光を持って輝き、前方に向かって巨大な砲撃となって放たれた。
白銀の光に視界は埋め尽くされ、そして――――。
――――彼を、失った。
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