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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜絶望と悲哀の小夜曲〜
私の弟
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シリカとロザリアは、思わず先刻までレンがいた場所を見た。
だが、その場所には凄まじい圧力が加えられたような二つの足跡があるだけだった。
「な……なん…………どう……………」
不明瞭な言葉を列挙するロザリア。訳すとすれば、なんで、どうやって、だろう。
シリカ達のリアクションを見て、うんうんと満足そうに頷き、袖口に手を突っ込み、濃紺の結晶を取り出した。
本当何でも出てくる袖口だ。そのうち、某青猫型ロボットの扉型転移装置でも出てきそうだ。
「これは、僕に依頼したおじさんが全財産をはたいて買った回廊結晶、黒鉄宮の監獄エリアが出口に設定してある。これで
牢屋
(
ジェイル
)
に跳んでもらうよ。後は《軍》が面倒見てくれるでしょ」
他の男達と同じように地面に座り込んだまま唇を噛んだロザリアは、数秒押し黙ったあと、紅い唇に強気な笑いを浮かべ、言った。
「……もし、嫌だと言ったら?」
その問いに、レンはわざとらしく
顎
(
あご
)
に手を当てて、困ったふりをしながら即答した。
「んー、そだね。手足をぶった切って、芋虫みたいな姿にしちゃおっかなー」
レンのあまりにも冷徹な言葉に、ロザリアの笑みが凍りつく。
なまじ、のほほんとした顔を崩さずに言うから、余計に怖い。
「………やりたきゃ、やってみなよ。グリーンのアタシに傷をつけたら、今度はあんたがオレンジに──」
ズッバアァァァァン!!
ロザリアの言葉は、凄まじい音に阻まれた。
口をつぐんだロザリアが、思わず足許を見ると、爪先三センチほどの地面に深々とした爪痕が刻まれていた。
「それじゃ、遠慮無く逝く?」
俯いたロザリア、そしてへたりこんでいる男達を見て、レンは言った。
「さてっと、おばさん達自分の足でコリドーに入る?それとも芋虫の姿で?僕的にはどっちでもいーけどねー」
もう、だれも強がりを言う者はいなかった。
全員が無言でうなだれるのを見て、レンはワイヤーを器用に袖口に仕舞い、濃紺の結晶を掲げた。
「コリドー・オープン!」
のほほんとした声が、シリカの耳に響いた。
三十五層の風見鶏亭に到着するまで、二人はほとんど無言だった。
言いたいことはたくさんあるはずなのに、シリカの喉は小石が詰まったかのように言葉が出てこない。
二階に上がり、レンの部屋に入ると、窓からはすでに赤い夕陽が差し込んでいた。
その光の中、溶け込んでいる紅いコートの少年に向かって、シリカはようやく震える声で言った。
「レンくん………行っちゃうの……………?」
しばしの沈黙、シルエットがゆっくりと頷いた。
「うん……。五日も前線から離れちゃったからね。すぐに、攻略に
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