第6話「虻も取らず蜂に刺される」
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ふらつく足で立ち上がる銀時の眼は、尚もお岩を捉え続けている。
二つの視線がお岩を挟む。反発でも非難でもない、まっすぐな想いがこめられた瞳の視線が。
「何も知らないガキ共がベラベラぬかしてじゃないよ!」
怒涛の声と同時に生まれた衝撃波が銀時たちを壁に叩きつける。骨が軋むほど身体が圧迫される。
「ああそうさ。その通りさ!!けどね、どう戻したってこぼれ落ちちまう水があるんだよ。未練を断ち切れない奴がいる!!どうしたって癒えない傷を持つ奴がいる!ここはそんな行き場のない亡者たちの唯一の居場所なんだ!」
ここがなくなったらスタンド達はどうなる?どこへ行く?誰がスタンドたちを救える?
私しかいない。ずっとスタンドと共にしてきた私しかいない。
女将として、真のスタンド使いとして、この旅館を護らなければならない義務がある。
さ迷う魂たちを救う、神に与えられた使命がある。
そう、選ばれた人間。私は神に選ばれた人間なんだ。
神に選ばれた私の仙望郷を潰す奴は絶対に許さない!
幼い頃からスタンドが見えていたお岩には、いつしかそんな使命感で溢れていた。
「ギン、それを奪おうとした罪は……」
仙望郷の猛者はゆっくりと拳を引き上げる。目の前の反逆者に制裁を下す為に。
ただ――
自分の声が次第に悲鳴に近くなってゆくのを、お岩は自覚していなかっただろう。
その姿がまるで泣き喚く子供のようだったことにも。
「重いよ!!」
巨大な拳が容赦なく銀時に振り下ろされた。
?
鈍音。
砕かれた骨と肉。致命傷にならないよう手を抜いたが、へこんだ身体ではもう戦えまい。
吠える犬は一度手強く躾てしまえば大人しくなる。次に銀時が目覚めた時は、お岩の従順な飼い犬になっている――そう思っていた。
「!?」
無音。
骨が砕かれた音も肉が潰れた音もしない。あえて言うなら拳に小さな打撃音。
お岩の鉄拳は銀時に直撃する寸前に止められた。
そして巨大な拳は強引に押し戻されていく。
銀時に背を向けて立つ人影によって。
それを目にしたお岩は驚愕した。
「おい、貴様。何をしている」
訳が分からないまま疑問を投げられる。だが聞きたいのはお岩の方だった。
どうしてお前が逆らう。なぜお前が閣下化してる。
倒れる銀時の前に立ってお岩の拳を受け止めているのは、白塗りの肌に裂けた口、そして逆立った銀髪。まさしく、閣下化した双葉だった。
「あんた…なんで…」
混乱するお岩からもれた疑問に、双葉は嘲笑の啖呵を切って答えた。
「誰が貴様に仕えると?誰が貴様に従うと言った?」
裂けた口から歌うように奏でられる言葉は少しずつ強張っていき、押し戻す力も比例するように増していく。
「兄者に楯突く
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