アインクラッド 後編
圏内事件
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キリトはそれをエギルに手渡す。それだけで意味を悟ったらしいエギルは、リングの部分を嫌そうに見ながらそれを鑑定した。
「……残念ながら、プレイヤーメイドじゃなくNPCショップで売ってる汎用品だ。ランクもそう高くない。耐久度は半分近く減ってるな」
「そうだろうな。あんだけ重装備のプレイヤーをぶら下げたんだ。物凄い加重だったはずだ。……まあ、ロープにはあんま期待してなかったさ。次が本命だ」
そう言ったキリトが続いて取り出したのは、柄の部分をびっしりと逆棘が覆っていると言う、異形のショートスピアだった。全体が黒い金属で出来ており、天井にぶら下げられたオレンジ色のライトを反射して金属光沢を放っている。
「これ……」
それを見た途端、隣に座っていたエミが恐怖の滲んだ声を漏らした。無理もない、この棘は深く突き刺さると抜けづらくなる特殊効果を発生させるためのものだが、恐怖という感情が存在しないモンスター相手には効果が薄い。つまりこれは、明らかに『プレイヤーを突き殺す』目的で鍛えられた槍なのだから。
「PCメイドだ」
鑑定を終えたエギルが低い声で言った瞬間、キリトとアスナが揃って身を乗り出し、マサキは切れ長の目を更に細めた。PCが作成した武器には必ず作成者の名が記録されるため、それを辿ることが出来れば事件の真相により近付くことが可能になる。
全員の視線がエギルに集中する。それに促されるように、エギルが手元のウィンドウを読み上げた。
「作ったのは《グリムロック》。綴りは《Grimlock》。聞いたことねぇな。少なくとも、一線級の刀匠じゃねえ」
「……エミは、その名前に聞き覚えは?」
中層プレイヤーとの関わりが多かった彼女であれば、もしかしたら……。そう考えたマサキが首から上のみを回転させて問いかける。エミは暫し天井を見上げ考え込んでいたが、やがて申し訳なさそうに首を左右に振った。
「……なら、まずはグリムロック氏を探すところからか……」
「このクラスの武器が作成できるようになるまで、まったくのソロプレイだったとは考えにくいわ。中層の街で聞き込めば、《グリムロック》を知る人物が見つかるんじゃない?」
「確かにな。こいつらみたいなアホがそうそう居るとは思えん」
深く頷き、マサキとキリトを交互に見やるエギル。
「な……なんだよ。俺だってたまにはパーティーくらい組むぞ」
「ボス戦のときだけでしょ」
必死の反撃もむなしく、うっ、と言葉を詰まらせたキリトを尻目に、マサキはエギルに一度睨むような視線をくれて立ち上がった。
「……とりあえず、そのグリムロックの生死だけでも確認しておくべきだろう」
それには他のメンバーも同感だったらしく、マサキの言葉に全員が頷きで答えた
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