アインクラッド 後編
圏内事件
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
応は、「わたしも行く!!」と持ち前の善人根性を遺憾なく発揮してのたまったエミを仕方無しに引きつれ、キリトの指示通り第五十層主街区《アルゲード》の商店二階の戸を開いた時の、中に居た三人のものである。ちなみに、上から店主のエギル、キリト、そしてアスナだ。
驚きばかりの声を漏らしたキリトとアスナに対し、気味の悪いニヤニヤとした笑いを滲ませたエギル。何を考えているかは分かりたくもないが、ロクなことを考えていないことだけはよく分かるため、マサキは彼を一瞥し「違うぞ」と一声掛けて、空いていた揺り椅子に腰掛ける。出てきたお茶のグレードに、マサキとエミの間で随分な差があったことには無視を決め込んで。
「……で、メッセージの《圏内PK》とやらは、既存のものと何か違うのか?」
「《圏内PK》だぁ!? オイオイ、そんなこと聞いてねーぞ」
白い湯気が立ち上る湯飲みに口をつけながらマサキが問うと、初耳だったらしいエギルがチョコレート色の巨体を仰け反らせて驚いた。隣に座るエミにはここへ来る途中でメッセージの内容を伝えてあったためエギルほどの反応を見せることはなかったが、やはりまだ動揺が残っているのか、普段は愛くるしい笑顔を浮かべている口をつぐみ、眉間にしわを寄せていた。
「今、説明する」
マサキたちの視線を浴びて、キリトは真剣に頷き事件のあらましを語った。
曰く、五十七層主街区の広場で《カインズ》と言う名前のプレイヤーが《継続貫通ダメージ》と思われる攻撃によって死亡。その場に居合わせたプレイヤー全員でデュエルのウィナー表示を探すも発見できず、カインズが吊り下げられていた塔の中にも人っ子一人見当たらなかったという。
「……それで、マサキなら何か思いつくんじゃないかと思って、アルゴを通じてメッセを飛ばしたんだ」
「俺は犯罪捜査なんぞやったこともないがな。……とりあえず今言えるのは、既存のPK法では説明がつかない、ということくらいか」
渋みの強い緑茶を啜りつつマサキが言う。
現在知られているPKの方法には、プレイヤーが寝ている隙にウインドウを操作して《完全決着モード》でのデュエルを挑む《睡眠PK》、その派生として、回廊結晶を用いることで鍵付きの部屋の中にいるプレイヤーに対して睡眠PKを行う《ポータルPK》等があるが、今の話を聞く限り、そのどれも条件にはそぐわない。この方法では相手にデュエルを申し込むことが必須で、デュエルのウィナー表示が必ずどこかに現れてしまうためだ。
「そもそも、情報が少なすぎる。それだけだと何とも言えん」
「分かってる。そこで……こいつだ」
キリトは頷き、ストレージから一本のロープを実体化させた。耐久値が残り少ないのか、所々にほつれが確認でき、一方の端には丁度人の頭が入る程度の輪が作られていた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ