第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
誰かの記憶:深い霧の中で
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担ぎ上げられてしまった。必死にその決定に抗おうと試みるものの、やはり三対一では不利というか、三人寄れば文殊の知恵というか、悉く論破されてしまい、名ばかりリーダーと化した私は、彼女たちの協力もあって、幸いにも誰一人欠けることなくPTの平均レベルを十一まで上げることに成功した。そして、第三層の情報が記された攻略本の中で記載されたクエストに関しての記述で《ギルド結成クエスト》という項目に、PT全員が目を奪われたのだ。
常に四人PTとして行動していた私たちに、ギルドという枠組みはあまりメリットがあるようには思えなかった。前線メンバーの勢力争いに参加する意思もないし、ボス戦にさえ参加していない私たちには《前線の一角に食い込む》というその考えさえおこがましいだろう。ただ、ギルドを結成することで、この四人の不思議な巡り逢わせを結ぶ《PT》というシステム的に弱々しい繋がりをより強固なものにできるなら、これまで支え合ってきた仲間たちと共に前に進むための旗印となるなら、そして、この世界の理不尽に抗う奇跡を得られるならば………。
そんな思いが私たちを動かし、今に至るというわけである。
――――一ヶ月余りの長い記憶がようやく現在に追いつき、余計な思考の余韻を脳内から一蹴して背後を確認する。未だに五体のモンスターが追い掛けてくる状況は変わらないが、彼等の行動範囲はこの霧に沈んだ森の内側であり、そこから先に追跡が及ぶことはないはずだ。
巨木と霧に遮られた視界の中、リゼルのナビによって背景に溶け込んだ《トレント》を引っ掛けることもなく順調に進み、やがて霧を透過する光が量を増して、開けた道が近づくのを視覚的に察知する。森を抜けるまで残り二百メートルを知らせるリゼルの声が響き、全員が逃走劇にスパートをかける。
「……ひぐぅッ!?」
………だが、私だけが足を縺れてその場で転んでしまい、《転倒》の拍子に装備していた片手剣も手から転げ落ちる。どうしてこのタイミングで、と何度も自身を問い質すが、背後に視線を向けた際に目に映った《右足首を射抜いた矢》が全てを物語っていた。これまで矢が飛んでこなかったことを考慮しても、この出口付近で新たに《シューター》を引っ掛けてしまったと推測するのが正しいだろう。
「リーダー、今行くから待ってて!」
「ダメ、来ないで! このまま逃げてッ!」
退路確保の為に先行していたレイを筆頭に三人が踵を返して駆け寄ってくるのを、有らん限りの声量で制する。敵の総数は単体のみの増援とは考えづらい。《将校》の招集スキルによって周辺から呼び集められた小隊であることも考えられる。後者であるならば、その増援はいよいよ単体で済むとは思えないし、今後交戦するようならばさらに数が増えることも在り
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