第4部 誓約の水精霊
第4章 惚れ薬
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まるで別人。
ルイズは自分がないがしろにされたぐらいで、こんな風にはならない。
まず怒る。
昨日のように。
怒る理由がわからないが。
そして、ルイズは怒ったら手を甘噛みなんてしない。
思いっきり噛む。
そして殴る。
こんな風に媚を売ってはこない。
そう思ったのだが、ルイズが考察を許してはくれない。
「わかった?」
ウルキオラは答えない。
「ねえ、わかった?」
「ああ」
しかたなく答えた。
「だ、誰が世界で一番好きなの?はっきり言って」
胸に顔を埋めて、泣きそうな声で呟く。
ウルキオラはルイズのある言葉に疑問に思った。
「誰が好き…とはなんだ?」
「え?」
ルイズは可愛らしく首を傾けた。
「人を好きになる感情が理解できない」
ウルキオラは率直な疑問をぶつけた。
しかし、ルイズにはそれがいいように言い逃れしようとしているようにしか聞こえなかった。
「うそ!ほんとは理解してるくせに」
「俺が一度でもお前に嘘を吐いたことがあるか?」
ルイズは下を向いて考えた。
ない。
ないのである。
「ほんとに?」
「ああ」
「ほんとにほんとにわからないの?」
「ああ、そうだ」
「そっか…なら許してあげる」
ウルキオラは何を許すんだ、と思った。
すると、ルイズはウルキオラの膝の上から下りた。
そして、ととと、とベッドの向こうに駆けだした。
ベッドの壁の隙間に隠していたらしい何かを掴むと、それを持って再びウルキオラの側に駆け寄ってくる。
「ん、ん、ん」
そしてウルキオラに持ったそれを突き出してきた。
「なんだ、これは?」
「きて」
それは毛糸が複雑にからまったオブジェであった。
どう見ても、着られるような代物ではない。
ウルキオラは受け取ると、はて「キテ」とはどういう意味だ?と頭をフル回転させた。
まさかとは思うが、「着ろ」という意味か?
いや、まさかな。
どこに体を通せばいいのか、さっぱりわからなかった。
ルイズはウルキオラをじっと……、泣きそうな目で見つめたままだ。
ウルキオラは聞いてみることにした。
「一応聞くが、これはなんだ?」
ルイズの顔がふにゃっと崩れた。
「セーター……」
「なに?」
聞き間違えだろうか?
ウルキオラはもう一度聞くことにした。
「セーターだもん……」
ウルキオラは目を見開いた。
さすが異世界のセーターは出来が違う。
ウルキオラの思考回路の右斜めをゆく。
ウルキオラは自称セーターを両手で持ち上げた。
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