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101番目の舶ィ語
第五話。異世界にある村
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一之江が尋ねているのは、そういう事ではない。

「俺の『物語』だったら手に入れるし、そうでなかったら……」

「なかったら?」

俺を見つめる一之江の視線は鋭い。
生半端な返答では満足しないだろうな。
だから俺は覚悟を決めた。

「もし、そうでなかったら……」

覚悟はしても、まだ迷いはある。

______ロアを、倒して。消してしまっても本当にいいのだろうか?

その判断を俺がしていいのだろうか、とか。
大切な人を守る為に、いざとなったら俺は戦えるのだろうか、とも。

そう思う自分がいる。

何もしないで仲間や大切な人が傷つく姿を俺は見たくない。
出来る出来ないじゃない、立ち向かえないのが一番駄目なんだ。

そう思う自分もいる。

俺は前世で経験してきた様々な出来事を思い出す。
今思えば辛く、苦しく、時には絶望したりして、何度諦めかけたり、何度死にかけたり、そういう大変な目に遭ったか。
一度は絶望し、普通の生活を送って一般人として過ごしたりもした。
そんな『普通』に馴染めず、本当の自分の居場所に戻ったりもした。
自分よりも遥かに巨大で、強力で、凶悪なヤツらに挑んだりもした。
だけどそれでもなんとか諦めずにやってきたんだ。

武偵憲章10条。
『諦めるな。武偵は決して諦めるな』

だから……俺は覚悟を示す。

『そういった事から逃げない』のが、主人公をするのに一番必要な素質だと俺は思うから。

「そうでなかったら?」

「相手が諦めて大人しくなるまで、何度でも戦って説得するよ」

本当なら『このロアを退治しよう』の方が正解なのかもしれない。
だけど俺は相手を倒す事には賛同できても、相手を殺す事には賛同できない。
それにロアは女性の方が圧倒的に多いみたいだし。
女性に乱暴な事はあまりしたくないからね。

「……80点ですね。まあ、そんなもんでしょう今は」

一之江は俺の迷いを把握し、溜息交じりにそう言ってくれる。
呆れているわけではない。
早く成長しろ、とそう言っているんだ。

「ありがとう、一之江」

「構いません。貴方には早くすげえ『主人公』になって貰わなければなりませんが、焦っても自滅するだけですので。
それに、その手のメンタルケアはキリカさんにお任せです」

「……『主人公』?」

俺達の会話を聞いていた音央が不思議そうに、おずおずと尋ねてきた。

「ああ、深い話は……無事に脱出してから話すよ」

「出られるの?」

そう疑問に思うのも無理はなかった。

「出るんだよ。どんな手を使ってでもな」

脱出不可能ではないんだ。

『8番目のセカイ』には確か、こう書かれていたはずだ。



『二度と出る事
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