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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
46.無力なる神意
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先の話を聞けば君は普通に日常を送れなくなるかもしれないぞ」

 彩斗は迷いなく答えた。

「そんなこと柚木を助けに行った時から覚悟の上ですよ」

 アレイストは満足したように笑みを浮かべる。
 わずかな沈黙が辺りを包み込んだ。そして唐突にアレイストが口を開いた。

「最初に君が一番気になっていることについて話すとしよう」

 これでようやく次へと進むことができる。これまで何も知ることなくがむしゃらに動いてきた彩斗だった。しかし、ようやくここで一歩を進むことができる。

「多分、先ほどので君も気づいたかもしれないが……我々は吸血鬼だ」

 やはりか。わかっていたことだった。彩斗の少ない情報の中でもわかってしまうことだった。
 しかし、引っかかることが一つだけあった。

「……我々?」

「そうだ。未鳥柚木にそこにいる白衣の女性、大高京子(おおだかきょうこ)。そして君の母親の緒河美鈴」

「え……?」

 驚愕のあまり声が漏れた。
 柚木だけではなく美鈴までもが吸血鬼など考えもしなかった。それならば彩斗の父親であり、美鈴の夫の緒河慎治はそのことを知っているのだろうか。さらに吸血鬼と人間の間に生まれた彩斗と唯はどちらなのか。
 吸血鬼と人間が子供を授かった場合には必ずしもその子が吸血鬼になるとは限らない。ただ魔力が高い人間が生まれてくることもあれば、なんの能力も持たないただの人間になる可能性もある。

「安心しなさい。彩斗くんも唯ちゃんも二人とも正真正銘の人間よ」

 困惑する彩斗に美鈴が安心させるように語りかける。
 別に自分の正体が実は吸血鬼だったといわれれも今の彩斗は驚かないかもしれない。それでもその言葉を聞いて内心ホッとしている。

「それに私たちは吸血鬼の中でもなった経緯もだし、そもそも存在自体が異質なものなのよね」

 白衣の女性、大高京子が椅子に深く腰をかけて煙草を吸っている。

「あなた医師なんだからせめて病院内で煙草を吸うのはやめなさい」

「別にいいでしょ。さっきの戦いで疲れてるのよ」

 さっきの戦いとは、海原とのことを指しているのだろうか。だが、彩斗はアレイストと大高の姿を一度も確認していない。別の場所で柚木を支援していたのか。
 それよりも彩斗は気になることを口にする。

「吸血鬼の中でも異質?」

「ああ、我々は吸血鬼の中でも少し特殊な存在なのだ。君も《真祖》と呼ばれる存在を知っているだろ」

 ああ、と小さく頷いた。さすがの彩斗でもそれは知っていた。
 《真祖》───最も古く、最も強大な魔力を備えた始まりの吸血鬼たちにして不老不死の存在だ。数千数万もの闇の軍勢を従え、各大陸にそれぞれの自治領である『夜の帝国(ドミニオン)』を築いている
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