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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
46.無力なる神意
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してきたそれを睨みつける。
 白髪に鋭い目つきの少年。軍服のような服を着ており、身体中から魔力の余韻が溢れ出ている。

「邪魔をする気はなかったのだがな」

 遅れて現れたのは同じく軍服を着ている男だった。オールバックに目元に刻まれた深い傷が特徴的だ。そこでようやくヴァトラーは彼らの正体に気づいた。

「黒死皇派がボクに何の用だい?」

 見覚えがあると思えば彼らは、獣人優位主義を唱える過激派グループの黒死皇派だ。だが、残党は主導者であるガルドシュが消えたことによって最近はおとなしくしていたはずだ。

「まぁ、ちょっとした挨拶だな」

 その瞬間だった。今まで押さえ込まれていたローブが膨大な魔力をこちらに向けて放出する。
 ヴァトラーが動く。だが、それよりも早く白髪の少年が動いた。
 襲いかかってくる魔力の塊を少年は何のためらいもなく殴りつける。あれほどの魔力を生身の人間が受け止められるわけがない。
 すると少年の右腕から鮮血が迸る。それは吸血鬼が眷獣をこの世界に呼び出すときに酷似していた。しかし一向に眷獣が出現する気配がない。それどころか白髪の少年は鮮血をまとったまま魔力の塊をそのまま迎え撃った。
 ローブから放たれた魔力は少年の拳に激突すると真っ二つに分断される。それは獅子王機関の舞威媛が操る“煌華麟”の空間断裂に似ている。

「ほう……」

 ヴァトラーから感嘆の声が漏れる。
 白髪の少年はまるで何もなかったかのようにこちらへと視線を向けた。正確には、オールバックの男にだ。

「なんだ……その眼は……」

 動揺するヴァトラー。
 鋭い瞳はまるで吸血鬼のように真紅に染まっている。いや、違う。それ以上だ。
 吸血鬼よりも深い緋色。それは漆黒をまとっているようだ。

「そう気を立てるな、蛇遣い。こいつも私も今おまえと戦う気などない」

 もう一人の黒死皇派の男がそんな言葉を残して海の中へと消えていく。それを追い白髪の少年も海へと飛び込んでいった。
 いつの間にか空中を浮遊していたはずのローブの魔術師もその姿を跡形もなく消していた。
 ヴァトラーは一人甲板の上で不敵な笑みを浮かべて魔力の余韻に浸る。
 十三号増設人工島(サブフロート)ではいまだ二つの強大な魔力が激突しあっていた。




 身体が重い。
 意識を取り戻した彩斗が初めに思ったことはそれだった。まるで自分の体に何十キロもある鉄の塊でもまとっているようにだ。
 天井からは蛍光灯の光が容赦なく降り注ぎ、起きたての彩斗にはかなりきついものだ。
 とりあえずここはどこなのだろうか。辺りを見渡してはみるが白いカーテンで囲まれており、周りの状況を確認することができない。それだけの情報だけでもここがどこなのかは理解すること
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