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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
46.無力なる神意
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夜明け前の海には静寂が包み込んでいるはずだった。しかし今日の海は荒れ狂っていた。
波をとどまることを知らぬ程に舞い上がり、風は全てを破壊する勢いで吹き荒れている。
その中心に浮き続ける一隻の船。
「──“
娑伽羅
(
シャカラ
)
”!」
ヴァトラーの狂気に満ちた叫びが響く。それと同時に海蛇にも似た姿を持つ眷獣が、超高圧の水流へと姿を変えて海面へと襲いかかる。爆発的な威力に再び海は上空へと舞い上がっていく。
しかしそいつはそこに何事もなかったかのように浮遊している。
漆黒のローブを身にまとい表情すら見えぬ不気味な人物。
「いいね。愉しませてくれるじゃないか!」
ヴァトラーが喜色を浮かべながらさらに眷獣を出現させる。
「──“
難陀
(
ナンダ
)
”! “
跋難陀
(
バツナンダ
)
”!」
新たに出現した二体が混ざり合い魔力を増幅させ、新たな眷獣を創り出す。灼熱の炎をまとった、鋼色の龍。真祖に匹敵する膨大な魔力が、海面を激しく波立たせる。
圧倒的な魔力を真正面から受けようともローブは動じるどころかむしろさらに冷静に見える。顔が見えないというだけでかなりの不気味さを醸し出す。
融合眷獣の攻撃がローブを襲う。しかしその攻撃はまるで空間を歪められたかのようにローブを避けていく。そしてローブを襲った攻撃と同等の魔力が空気を震わし、音速で融合眷獣へと襲いかかった。自らの攻撃と同等の衝撃を受けた融合眷獣は消滅する。
「ぐ!?」
ローブはヴァトラーの攻撃を防いだのではなく相殺した。そこで一つの正体に気づいた。
「キミのその力は複製魔術の類いだネ」
「オマエニ答エル必要ナドハナイ」
くぐもった声がヴァトラーの耳に届く。
ローブは使う魔術は、船を止めている不可視の壁、空間制御、肉体の消滅などとそのどれもが高難易度の魔術である。それを使用できるだけの魔力量を彼からは一切感じることがない。つまり何かしらの方法でその現象に似た状態を再現していると考えるのが妥当であろう。さらに言うならばそれだけの高難易度魔術を複数会得することなど例え“
書記
(
ノタリア
)
の魔女”や“空隙の魔女”であっても不可能に近いであろう。
「まァいいさ」
ヴァトラーは狂気に満ちた笑みを浮かべて魔力を大気中へと放出する。
するとローブがわずかに右腕を動かした。その瞬間、膨大な量の魔力が大気中へと放出されていく。その感覚をヴァトラーは知っている。真紅の瞳がローブを睨みつける。
ヴァトラーの魔力が蛇の形を形成しようとしたその瞬間だった。上空から飛来してきた何かが眷獣と衝突する。形作られる前の不完全な眷獣はその姿を消滅させる。
「ボクの邪魔をするとはいい度胸だね」
ヴァトラーは上空から落下
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