意味と狂人の伝説――収相におけるナエーズ――
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けの世界で何をして生きろと言うの? 私が世界を生きる事に何の意味があると言うの!?」
「意味などない」
蜂は断じた。
「意味のない所、ならある。君の魂の空白に。その空白を意識する事は難しいだろう。生きる事を意味で測る事はできない。しかし、意味の軛から正気のまま逃れる事もまた困難だ。意味という判断基準を失った人間は狂人でしかない。ウラルタ、君は正しく狂う事ができなかった。だから死んだ」
「じゃあどうすればいいのよ――」
ウラルタは両手で顔を拭う。長い時をかけて、いつか町をばらばらにしてしまう破滅の歌、波の音楽を聞きながら。
「生きろ」
羽音を立てながら、蜂は高度を上げる。
「人よ、自ら死ぬ必要はない。じきに全てが終わるのだ。全ての生きる苦しみが終わる――」
消えていく。飛んでいく。夜の中、恐怖の中へと。そこには闇しかない。そこには死しかない。破壊と、戦いしかない場所へ、蜂は帰っていく。
「己がさだめを生きるが良い、腐術の魔女」
赤い空、病める太陽。その彼方に小さな点となって吸いこまれていき、ウラルタは手を伸ばすけれど見えず――。
カルプセスの市庁舎で、死んだペシュミンの体が倒れる。
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