初めての仲魔と実戦
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なりとも勝算があるなら、賭けに出ることも必要だと徹は己に言い聞かせる。そして、少しでも勝算を上げるために、確実に勝つために、ゴブリンの助力が必要だ。ならば立たねばならない。己の仲魔が喰われる前に。また、何かを失う前に。
「へー、凄いですね。まだ立てるとは思いませんでした。私の一撃を受けて生き延びただけでも大したものだっていうのに、この上でまだ立つとは。坊やは、そのままオネンネしてた方が楽だったと思いますよ」
満身創痍の体をどうにか立たせた少年を、悪魔は素直に賞賛する。実際、彼女は少しの手加減もせずに致命傷を狙った奇襲をしかけたのだから。それを僅かにでも反応し、重傷を負いながらも致命傷をさけた手腕は、彼女をして十分に賞賛に値した。同時に、少年の身でありながら、それ程の技巧をもつ少年にどうしようもなく興味が惹かれた。彼女の悪い癖だ。人の身であったときから、彼女は美しく強い者が好きだった。目の前の少年は、容姿だけでは美たりえないが、その強さと意思まで含めれば十分以上に合格点だ。この少年が何者なのか、興味は深まるばかりであった。
「うるさい、化け狐。これでも、体は頑丈な方でね。あの程度じゃ死ねないし、死ぬつもりもない。何より、俺は負けるつもりはないんだからな!」
しかも、その身で立ち上がり、負けるつもりはないと言い放ったのだから、悪魔『妖獣チェフェイ』は喜悦にその身を震わせた。ああ、何たるその美しさか。救出の対象が醜い悪魔であることを除けば、そのシチュエーションは文句なしであったし、絶体絶命の状況で諦めずに仲魔を取り戻さんとするその清廉で純粋な意思は、チェフェイにはどこまでも美しく感じられたのだ。
だが、それゆえにチェフェイには油断はない。彼女は目の前の少年の力量をけして過小評価していなかったし、その技巧に感嘆しつつも冷静に評価していたからだ。
そして何より、チェフェイは己が美しいと感じたものが壊れる様が好きなのだ。彼女の悪行として知られる『裂帛の響き』。絹を裂く音を好んだため、国中から高価な絹が掻き集められたとされるが、実際には少し異なる。彼女は美しい絹を好んだゆえに、それが引き裂かれる際の音、断末魔ともいうべきそれを好んだのだ。それをは美しいものを汚したいという感情の発露であったのかもしれないし、一風変わった破壊衝動の発露だったのかもしれない。まあ、どちらでもよいことだ。彼女が己が美しいと感じたものを壊すことに喜びを覚えるのになんらかわりはないからだ。
自身へと距離を詰める少年を横目に見ながらも、チェフェイは少年を引き裂く喜悦を思い、光悦に身を震わせる。醜いゴブリンの本体など気にならなくなり、邪魔と言わんばかりに放り出す。とはいえ、それは油断でもなんでもない。少年を認めたからこそ、四肢を自由な状態に
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