暁 〜小説投稿サイト〜
FOOLのアルカニスト
初めての仲魔と実戦
[2/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
しか戦ったことないから、実戦経験がないといわれりゃそれまでなんだが。今更、必要あるのか?」

 雷鋼の指摘はもっともなものだし、徹も認めるものだが、それでもなお、徹には己に必要なものであるとは思えなかった。確かに、純粋な実戦経験といえば、桐条の実験でのシャドウとの一戦くらいしかないが、徹は訓練とはいえ、遥かに格上である雷鋼とその仲魔に模擬戦という言葉を借りた地獄を見せられてきたのだ。今更、それ以下の悪魔と戦ったところで、何の益があろう。

 「ふん、まだまだ未熟じゃな。実戦の恐ろしさをまるで分かっておらぬ。まあ、ここで言うても詮無いことじゃ。それは己が身で味わい知るがいい。とにかく、これは決定事項じゃ。儂が管理する異界の主を殺してこい。……珍しさから生かしておいたが、いい加減うっとおしいのでな」

 雷鋼はそう言って、それ以上は問答無用と未だ疑念を抱く徹を縛り上げると、強引に異界に放り出したのだった。

 「いてて、最後は力づくかよ。あの糞爺……。俺の装備はっと」

 放りこまれたとはいえ、雷鋼も鬼ではなかったらしい。拘束されていた縄は、異界に放り出される時に切られていたし、徹の愛刀である『長篠一文字』と、ポケットベルを模したアナライズと召喚機能のみがついた最低機能のCOMPに加え、僅かな道具が入ったポーチが置かれていたからだ。加えて、訓練直後であったことが幸いした。徹が着込んでいるのは特殊な繊維で作られた防刃服であり、そのうえに羽織っているのは、衝撃を吸収するのに優れた防護服だ。彼自身のMAG力場ともあいまって、並の攻撃では破られることはない。

 「うわ、道具しょぼっ!宝玉は1個だけ、傷薬が3個にチャクラドロップが1個……。これで格上の異界の主を殺せとか、あの糞爺、俺を殺す気かよ。……しかも、費用は俺持ちとか、マジでないわー」

 ポーチの中身を調べ、あまりの悲惨さに愕然とする。ペルソナ召喚が精神力によるもので、魔力を使わないからといって、魔力回復手段がチャクラドロップ1つだけである。しかも、体力回復手段は、軽傷用の傷薬が3個に完全回復できる宝玉が申し訳程度に一個と、変わらない酷さだ。己より力量が高いと分かっている上に異界の主である悪魔に挑むには、些か以上に心許ない内容であった。
 さらに、ダメ押しと言わんばかりに、ポーチの底に入っていたメモの内容は『この費用は全てお前持ちじゃ』であり、徹を心底げんなりさせた。

 「ギヒヒ、イキテルヤツ、ニンゲンニンゲンダ!イチネンブリノゴチソウダ!ウマソウナガキダゾ!」
 「オレガクウ」
 「イヤ、オレダ」

 徹の心境をよそに現実は待ってくれない。それが異界の中なら尚更である。メモを見つめながら、ぷるぷると小刻みに震える徹を囲むように3体の悪魔が現れる。幽鬼ガキ、LV3程度
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ