初めての仲魔と実戦
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その日、少年は死にかけていた。まあ、ぶっちゃけそれはどうでもいい。少年にとって死に掛けるどころか、死ぬこと自体が日常茶飯事であったから。
だが、今この時に限って、少年は死ぬわけにはいかなかった。初めての『仲魔』が悪魔に喰われようとしていたのだから。正直、体は満身創痍で動くのは億劫だし、現状で選ぶべき選択肢は間違いなく『逃亡』が正解だ。それでも、少年はそれを選ぶことはできない。本来ならば、現実世界での悪魔の死とは、肉体を一時的に構成できなくなるに過ぎないので再召喚は可能であるが、目の前で行われようとしている事は違う。捕食は、存在そのものを生体マグネタイトに分解して吸収するものだ。ましてや、彼の仲魔は本体だ。あれをされたら最後、契約が切れ再召喚は叶わないだろう。
だから、諦めるわけにはいかない。ここで膝を屈しているわけにはいかない。もう、失うのは嫌なのだから。ならば抗うしかないのだ。少年は満身創痍の体に鞭を打ち、静かに立ち上がったのだった。
「へー、凄いですね。まだ立てるとは思いませんでした。私の一撃を受けて生き延びただけでも大したものだっていうのに、この上でまだ立つとは。坊やは、そのままオネンネしてた方が楽だったと思いますよ」
徹の仲魔の首を片手で締め上げたまま、興味深げに徹を見つめる絶世の美少女。その姿は、少女であるにもかかわらず、妖艶と言うほかない美貌であった。一方で、人あらざる証であると二尾の尻尾と狐面が不思議に似合ってもいた。
「うるさい、化け狐。これでも、体は頑丈な方でね。あの程度じゃ死ねないし、死ぬつもりもない。何より、俺は負けるつもりはないんだからな!」
声高らかに宣言すると、徹は異界の主たる化け狐へと距離を詰めた。死に抗う為に、何よりも勝つ為に!
「徹よ、お前ちょっと行って、異界の主殺して来い」
きっかけは、雷鋼に軽い口調で言われたそんな言葉だった。内容はどう考えても、口調とつりあっていなかったが……。
「はい?いきなり何だよ?」
その日を訓練を終え、調整に屈伸をしていた徹は、突拍子のない言いつけに雷鋼の真意が見えず、訝しげに疑問を返す。
「正式な修行を始めて、早二年。お前も大分形になってきたのでな。そろそろ、実戦をと思ってな」
「はっ、今更だな。実戦どころか、日常茶飯事で死にまくっている俺がそんなものを恐れるものかよ」
「喝!それが甘いというんじゃ。死を経験しているとはいえ、お前は死んでも儂が蘇生させると思うて、甘えがあるじゃろう。お前の死に対する感覚は甘い。いや、甘くなっておる。ここらで、実戦の厳しさと死というものの取り返しのなさを改めて識るがいい」
「まあ、確かにそれがないとは言わないし、師匠以外とじゃ、師匠の仲魔と
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