コヨミフェイル
015
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「お前様はもう忘れたのか?いや、まだ忘れておるのか?お前様は呆気なく弾かれおったではないか。まるでお前様が自ら弾かれにいったかのように」
「なわけねえだろ」
僕は攻撃をわざと弾かせて攻撃の隙を与えるほどドMではない、どこぞの後輩ほどドMではない。
けれど、そう思われてもしかたがないほどに鮮やかに弾かれたのだろう。僕にはそれを視認すらできなかったのだから。
「ていうか、こいつ、強過ぎないか?」
半端にしか吸血鬼化していないが、そんな僕よりも戦闘力のない神原、左腕に身を任せれば僕を戦闘力で優に凌駕するのだろうが、それを万が一にも選択しないだろう神原、が深手とは言っても、致命傷には至らない怪我で済んでいるのはおかしいだろう。
「それは多分相手がお前様だからじゃろう」
「あん?」
「お前様の妹御は憑かれているとは言えども、意識はうっすらとはあるのじゃ――つまりはトランス状態じゃ」
トランス状態――この言葉を聞くのは少し久しい。とは言っても夏休み前だが。
「要するに、うっすらと残っている意識が神原を相手しているときは力を押さえていたのが、僕のときは加減をしていない、もしくは逆に増長させているかもしれないということか?」
僕は忍と向き合って微動だにしない火憐に目を向けた。
微動だにしないのは、忍が睨みを利かせて牽制しているからなんだろう。
「じゃろうな。攻撃を止めることはできんでも黄泉蛙にあらがって加減することはできるじゃろう。しかし、大方、お前様から受けた度重なる肉体的、性的苦痛に対する怒りが加減させないじゃろうな。しかも、日常的にお前様に暴力を振るっておるからあまり抵抗がないのじゃろう」
「前回の物語で解消されていたのじゃないのかよ!」
あれだけ僕をボコボコにしたというのに、まだ足りないというのか!あれで綺麗さっぱり後腐れなしじゃなかったのか!しかも、事あるごとに僕に暴力を振るっておいて、足りないのか!今ではそっちの方が暴力的じゃねえか!
それでも怨みの念が晴れない程に怒りを植え付けた僕が悪いのか?
ねえ、教えて、狂っていたのはどっち?
火憐?
それとも、僕?
誰に対してとなく零した独白は、虚空にこだまし吸い込まれていく。
「何自分の信じていた世界が誰かの作り物で、自分はその作り物の世界の中の観察対象で、家族も友達も恋人も観察者じゃったと知って、気が狂れて、全員殺めるたが、実は殺めた全員は主人公を初めこそ観察対象と思っていたものの、やがてそうではなく、本当の家族、友人、恋人だと思い、逆に真実を知らない主人公に心を痛めていたと知り、悲嘆に暮れた揚句に、最後に自分を殺める哀れな主人公を描く悲嘆小説のモノローグを語っておるんじゃ」
「いや、現実逃避したくて」
「どういう現実逃避の仕
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